『思い立ったら即行動』を海外移住でやるリスク

「思い立ったが吉日」という言葉がありますね。これは「何かをしようという気になったら、その時すぐに始めるのが良い」という意味のことわざです。

先日Youtubeチャンネル『海外移住会議室』『英語もしゃべれずオーストラリアへ?わらしべ長者ロッククライマー』という動画をアップしましたが、ここでインタビューに答えているヨーヘイさんはまさにこの「思い立ったら即行動」系の人なのでご注目を。

ロッククライマーのヨーヘイさんは英語も喋れないまま、入国直後の宿泊先も決まっていないまま、ただ「そこに登りたい岩があったから」という理由でオーストラリア・メルボルンへ単身で飛び込みます。特に準備はしてこなかったものの、現地で気になる場所にドンドン突撃をして、徐々に友達を増やしてそのツテでクライミング関連の仕事を早々にゲット。2020年現在は日本でクライミングのインストラクターの仕事についているそうです。

まさに「とりあえず現地に行けばなんとかなるよ」「やればできるよ」の典型例なのですが、「でももし自分が海外に行くとしたら準備なしで行くなんて怖くてできない」と思う人も多くいらっしゃるでしょう。

実はこの『思い立ったら即行動』をやるべきかどうかは場合によるのですが、今回はその基準について少し詳しくお話していきます。


『思い立ったら即行動』をした方がいい人としない方が良い人

結論から言いますと、『思い立ったら即行動』をするのが合っているかどうかは、

「自分は手数が多い人なのかどうか」

を主な基準として考えると良いと思います。

先ほど出てきたヨーヘイさんは少なくとも僕の解釈ではこの基準にバッチリと当てはまる人でして、何かのチャレンジに成功しようが失敗しようが、休む間もなく次々と新しい行動に移っている人です。このような人は何か物事が上手くいかなかったとしても、そこですぐに次の策を打ち出して挽回できる可能性があるので、基本的には「考えている時間がもったいない。とにかくまずは動くべし」となるのですね。

逆に、僕は「行動する前によく考えるタイプ」の人間でして、海外に行く時は彼のようなやり方は絶対にやりません。これは僕が子供の頃に将棋をやっていたために「動く前に考える癖」がついていたというのもありますが、僕が「手数の少ない人間」であるという要素も非常に大きいのです。

僕はけっこう失敗を恐れるタイプで、特に策を考えていないまま何かに取り組み始めてそれで失敗してしまうと、次に何をやったらいいか分からなくなってしまいます。このようなタイプの人間は、必ずしも「とにかくすぐ動け!」というやり方が常にいいとは限らないのですね。

マシンガン型 VS スナイパー型

ここで、2つのタイプの人間を銃の種類に例えて考えてみましょう。「思い立ったが吉日」の「手数の多い」タイプの人間はマシンガン、「動く前に慎重に考える」「手数の少ない」タイプの人間はスナイパーライフルです。

マシンガンは何百発も連射が効くので、それほど正確に狙いを定める必要はありません。狙い方のイメージとしては「だいたいあの辺だな」ぐらいでよくて、撃ちまくれば何発かは獲物に当たるでしょう。

それに対し、スナイパーライフルはマシンガンのように何百発も撃ちまくるのではなく、1発で確実に獲物をしとめるのを前提としていますので、狙いがテキトーなまま撃ってはいけません。だって何も考えずに撃ちまくったらすぐ弾切れになってしまうでしょう?「今撃てば確実に当たる」という所までしっかり狙いを定めて、そこで初めて引き金を引くのです。

僕は2017年の8月からフィンランドで大学に入り直していますが、実際に北欧に移住しようと決心したのは2012年の事だったので、準備に5年かかっている事になります。学生ビザで乗り込むという手法で入国する予定だったので、留学生活に必要な生活費を予め働いて貯めておいたり、スウェーデン語やフィンランド語を日本にいる間に勉強して少なくとも一定以上のレベルで喋れるようにしておいたり、大学のIT科に入学した時の事を考えてプログラミング言語の勉強もある程度予習はしてありました。

「手数の多さ」と「戦略性の高さ」の2軸で考える

このように、同じ「海外に出る」にしても、それを「やりたいと思ったからやりたい時にやった」のと「長期的な狙いを持って入念に準備をする」のとではその意思決定から行動へ移す時のやり方に大きな違いがある事がわかると思います。

これは別にどちらが良いとか悪いとかいう話ではなく、この話の最初でも触れた「自分がどちらのタイプの人間なのか」によって、意思決定の仕方の相性が変わってくるという事です。

とはいえ、ここで注目しておきたい事があります。「手数の多さ」と「戦略性の高さ」の2つを軸にして図を作ると下のようになるのですが、

これを見ると「スナイパー型のような戦略性の高さ」と「マシンガン型のような手数の多さ」の両方を組み合わせた性質を持つ人が最も多くを得やすい事が可視化できますね。

この両方の性質を併せ持つ人の例としては、「ヒット作を生み出す漫画家さん」とかが挙げられると思います。漫画って、狙って売れようと思ったら話1つ描くだけでも相当入念にストーリーやキャラ設定を練らないといけないし、1発で当たる事なんて滅多にないから、何回ボツを喰らってもマシンガンのごとく新しいネタを次々と出し続けなきゃいけない。

逆に、この図を見れば「戦略性も低いし手数も少ない人」は「何も得られない人」になってしまいやすいという事も一目瞭然。まぁそりゃそうですよね。弾が2~3発しか入ってない銃しか持ってないのに何も考えずロクに狙わずテキトーに撃っちゃったら即弾切れですから。

もちろんスナイパー型とマシンガン型の両方の性質を併せ持つ人が最強なんでしょうけど、そうなるのはなかなか難しいですし、現実的には自分に合ったやり方に寄せていくのが吉となるパターンが多いと思います。人生は「何をするか、何をしないか」の決断の連続ですが、海外移住に限らず自己実現全般や何か大きな決断をする時の指標として、自分はどちらのタイプの人間なのかを意識すると、自分の決断に後悔するようなケースを減らせるのではないでしょうか。

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