Page 47:フィンランドのスウェーデン語教育事情

僕は現在オーランド諸島の学生用のアパートに住んでいて、ちょっと前まではルームメイトがいたのですが、彼はホスピタリティ系の学部を専攻していて、実習の関係で1年半ほどフィンランド本土のヘルシンキに行く事になり部屋を出て行ったので、僕はルームメイトがおらず1人暮らしの状態がここ1か月ちょいほど続いていました。

そして数日前、新しいルームメイトが入って来ました。学生用のアパートに入居したものの、彼はオーランド大学の学生ではなく、フィンランド本土にあるユヴァスキュラ大学の学生でした。フィンランドの夏休みは約3か月ととても長く、大学生の中には夏休み限定のバイトである「サマージョブ」をやる人がけっこういます。彼はオーランド諸島でサマージョブをゲットしたらしく、それで夏休みの間の2か月のみここに滞在する事になったのでした。

 

《コンテンツ》
・ルームメイトは先生の卵
・分野によって異なるフィンランドの教職事情
・外国語の先生=多言語の先生
・スウェーデン語必修の廃止?

 

【ルームメイトは先生の卵】

彼に何の学部なのか聞いてみた所、教育学部でした。フィンランドは「教育の質が高い国」という評判で知られており、日本でフィンランドの教育について紹介される時は「フィンランドの教育の質の高さの秘訣は大学の教員養成プログラムにある。大学の教育学部の倍率は非常に高く、それをクリアした本当に優秀な学生のみが集まり、そこに質の高いトレーニングを施すため、優秀な教員が輩出されるのだ」などともよく言われています。

「へぇ、じゃあ超難関の入試を突破したんだね!」と僕が言うと、彼は

「いや、教職って言ってもいろいろあって、僕の場合はスウェーデン語の先生になるのを目指してるから、他のと比べると倍率が低いんだよ」

とかなり控えめなコメント。

 

【分野によって異なるフィンランドの教職事情】

一般に「フィンランドで教員になるのはメチャクチャ難しい」と言われているのですが、彼の話によると、それはあくまで人気の高い分野を選んだ場合だそうです。例えば、小学校の先生のポジションはとても人気が高く、それに伴い倍率もものすごく高い。小学生という比較的年齢の低い子供にいろんな教科をまんべんなく教えなければいけないので、彼のスウェーデン語の先生のポジションとは求められるスキルがかなり異なります。彼の場合はあくまでスウェーデン語という「特定の教科担当」なので、日本でいう中学や高校の先生のポジションに応募する事になるそうです。

このあたりに関しては日本の教職事情と似ていますね。一口に教職や教員免許と言っても、小学校、中学校、高校とそれぞれ教員免許の種類は別です。例えば僕が持っているのは高校の英語科教員免許なので、小学校や中学校で教える資格は僕にはありません。

 

【外国語の先生=多言語の先生】

僕は日本で元高校の英語の先生で、僕のルームメイトはこれから中学または高校でスウェーデン語の先生になるのを目指しているのですが、日本とフィンランドの「外国語の先生」には1つ大きな違いがあります。

それは、日本では英語なら英語しか教えないのに対し、フィンランドでは英語しか教えない先生は非常に稀で、1人の先生が複数の言語を教えるのが普通だという事です。

一番多いのは、英語とスウェーデン語の2か国語の組み合わせ。他には

英語+ドイツ語
英語+ロシア語
英語+フランス語
英語+スペイン語

など、英語に加えてフィンランド周辺の国の言語をどれか1つを教えるパターンが多いのだとか。

語学が得意で3か国語を教えるという先生も、それほど多くはないものの一応ちょこちょこいるそうです。

 

【スウェーデン語必修の廃止?】

現在、フィンランドではフィンランド語とスウェーデン語が公用語で、学校教育においては英語とスウェーデン語が必修の言語、その他の言語は選択制となっています。しかし、近年「英語は必修のままでいいけど、スウェーデン語は別に必修じゃなくて他の言語と同じく選択制にして、やりたい人だけがやればいいじゃないか」という声が強まっており、スウェーデン語教育に関して大きな議論が巻き起こっているそうです。

フィンランドは独立してからまだ100年と非常に若い国であり、それまではスウェーデンやロシアなど、常に隣国からいじめられていた歴史があります。フィンランドとして独立した後でも、過去にスウェーデンに植民地支配されていた影響でスウェーデン語圏が国の中に一部残っており、スウェーデン語を喋るスウェーデン系フィンランド人が政治においても日常生活においても優位に立つ傾向があったそうです。

フィンランドの人口の5%ほどしか(ネイティブとして)喋らないとはいえ、スウェーデン語も正式にフィンランドの公用語であるため、スウェーデン語圏の人たちはフィンランド語圏にいる時も、現地の人たちにフィンランド語ではなくスウェーデン語で話しかける傾向があるそうです。これが役所などの公的機関のサービスを利用している時は特にそうらしく、「公用語なんだから、フィンランドのどこにいてもスウェーデン語が通じて当たり前」という感じの人もいるそうです。

このようなスウェーデン系フィンランド人の考えに対し、

以前書いた記事

Page 27:なぜフィンランド人は英語ペラペラなのか?

でも述べた通り、フィンランド語圏のフィンランド人のほとんどはフィンランド語と英語が話せていればそれでOKであり、スウェーデン語に関しては喋れなくても別にそれほど困らないし、あまりスウェーデン語を学ぶモチベーションを感じていない様子です。

「国民の95%はフィンランド語を喋るんだし、自分たちの日常生活でスウェーデン語を使う機会なんてないのに、何で学校でスウェーデン語の勉強を強制されなきゃならんのじゃ?」

というのがフィンランド国民の多数派を占めるフィンランド語圏の人たちの多くが持つ意見なのですね。でも、スウェーデン系フィンランド人は数こそ少ないものの発言力は強いから、

「ちょっと待てぇい!勝手に廃止すな、勝手に!」

と反発しており、すんなりスウェーデン語の非必修化とはいかないのが現状のようです。

1つの国に公用語が複数存在するってこういう事なんですね~。同じフィンランド人のはずなのに、言語が違うとやはりものの考え方も違う。同じフィンランド国民のはずなのに違う国の人たちみたい。

ここでふと思ったんですが、フィンランドのスウェーデン語圏のフィンランド人たちは、もう片方の公用語であるフィンランド語をどれぐらい一生懸命勉強しているんでしょうかね?フィンランド語圏のフィンランド人がスウェーデン語圏に来た時にフィンランド語で話しかけてきたら、どう対応するのでしょうか。

スウェーデン語圏のフィンランド人のどれぐらいの割合の人たちがこういう風に考えているのかは定かではありませんが、もし「公用語なんだからフィンランドのどこにいてもスウェーデン語が通じるべきた」と考えているのなら、逆の立場のフィンランド語圏の人たちも同じように「フィンランドのどこにいてもフィンランド語が通じるべきだ」と考えているはずだと想像すべきでしょうね。

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