Page 38:語学の独学での学習成果を可視化する方程式(その3):関連度

語学を独学で成功させるための方程式に関する記事の第3弾です。

過去の2つの記事では

学習成果 = 学習時間(時間) × 吸収率(%) × 関連度(%)

の方程式の内の学習時間と吸収率について解説しましたが、今回は

関連度

についてです。

前回も前々回も、

「学習成果は3つの要素の掛け算の合計値で決まるため、どれか1つでも極端に値が小さいと全体の学習成果も小さくなってしまう」

というお話をしましたが、この記事でもその事は再度強調したいと思います。学習時間と吸収率の数値を高めても、残りの1つの「関連度」の数値が低ければ、せっかくの努力が無駄になりかねないからです。

 

≪コンテンツ≫
・極端な例…漢字ドリル
・東大生も英語をロクに使いこなせない
・日本の英語教育では実は文法すらも教えていない
・じゃあどうすればいいのか?
・まとめ

 

【極端な例…漢字ドリル】

ある所に、Aさんという人がいました。Aさんは英語をペラペラに喋れるようになりたいという夢があるらしく、毎日毎日必死に勉強していました。毎日欠かさず3時間勉強するという生活を2年間続けたので、その学習時間は

3(時間) × 365(日) × 2(年) = 2190時間

と、2000時間を超えています。

Aさんは自分の今のレベルと使用する学習教材の難易度のバランスにも気を使っており、自分の今のレベルよりも少しだけ上のレベルのものを使うように常に意識していました。

その結果、教材の理解度は非常に高く、学習して時間が経ってからも学習内容はしっかりと頭の中に残っています。その吸収率は限りなく100%に近いといってもいいほどの出来の良さでした。

にもかかわらず、Aさんの英語は1ミリたりとも上達しませんでした。学習時間2190時間に100%をかけるのだから、2190時間分の学習成果が表れるべきなはずなのに、なぜこんな事が起こるのか?それはAさんが使っていた教材が

漢字ドリル

だったからです。

漢字ドリルを使って2000時間以上勉強したわけですから、確かに漢字はたくさん覚えた事でしょう。漢字検定の難しい漢字の問題を難なく解けても別に不思議はありません。しかし、漢字ドリルを使った勉強が成果を発揮するのはあくまで漢字が関わる分野の中のみであり、英語の上達には全く関係がありません。

従って、学習目標が「英語を上達させる事」なのに「漢字ドリルの勉強をする」というAさんの例は、学習成果の方程式で表せば、

学習成果 = 学習時間(2190時間) × 吸収率(100%) × 関連度(0%)

となり、最後に0をかけるため、どれほど勉強しようが学習成果はゼロ、という事になるのです。

 

【東大生も英語をロクに使いこなせない】

上の漢字ドリルの例を見て、

「いやいや、英語を上達させたいのに漢字ドリルの勉強するなんて、いくらなんでもそんなアホな勉強の仕方するやつなんていないでしょ?」

と思った人もいるかもしれません。

確かにこの漢字ドリルの例は少々極端ですが、実は日本の英語教育も構造的にはこれと大した違いはないのですよ。要するに、英語を使いこなせるようになるのとは関係ない作業に膨大な時間を費やしている、という事です。

日本の学校でも一部の中学校などでは改革が進んでまともな授業になってきていますが、改革がロクに進んでいない高校に関しては意味のない勉強に無駄に時間を費やす傾向が顕著です。

なぜそんな事が言えるのか?それは東大生の英語力を見ればわかる事です。

東大は日本の大学のトップであり、大学の入試問題の英語もトップレベルに難しいとされています。そんな入試問題をクリアして東大に入学したのだから、東大生は

「大学受験の英語をかなり高いレベルで習得した人たち」

とみなしてよいでしょう。

ではこの東大生たちは実際英語をどれぐらい使いこなせるのか?というと、実はけっこう悲惨なレベルです。

英語のテストにTOEFL iBTというのがあるのですが、これはIELTSと並んで世界規模で通用する、国際的に信頼度の高いテストです。ちなみにTOEICは事実上日本と韓国でしか通用しないテストで、日本人や韓国人と何のかかわりもない英語のネイティブたちはTOEICの存在すらも知りません。実際、TOEICで900や950を超えていても大して英語を使いこなせていない人はたくさんいますし、テスト自体も世界的にはその程度の存在感です。

で、TOEFL iBTは120点満点のテストなのですが、東大生がこの国際的に信頼度の高いちゃんとした英語のテストをやったら一体何点取れるのか?という疑問が湧きます。

下記のリンクの記事
http://toyokeizai.net/articles/-/46153?page=3
によると、東大などのいわゆる名門大学を受験する高校生たちは平均で

50点すらも取れないらしいですね。(←120点満点で、ですよ)

こっちの記事
https://webxeigo.com/270/
では、

TOEFL ITPという別バージョンのTOEFLのデータが紹介されていて、こちらでは実際に東大に合格した人達のスコアとなっています。ただし、それでもTOEFL iBTに換算すると70点いくかいかないかぐらいです。ただ、TOEFL ITPは日本人の苦手なアウトプット系のスキル(ライティング、スピーキング)がないので、これらが入った実際のTOEFL iBTでは東大生でも70点を超える人はほとんどいないでしょう。

これは一体何を意味するのかというと、日本の学校で教えられているやり方で英語を勉強して、例えそれを「東大生のレベルで極めた」としても、本当に国際的に信頼度の高いテストで実力を測ってみたら、東大生でも満点の半分も取れるかどうかという程度にしかならないという事です。

「東大生レベルで極めて」もこの程度のレベルにしかならないという事は、やはり日本の学校の英語教育は方向性がズレている、つまり

学習成果 = 学習時間(時間) × 吸収率(%) × 関連度(%)

の方程式で言えば、「関連度」の部分の数値がかなり低い、という事なのでしょう。

 

【日本の英語教育では実は文法すらも教えていない】

では日本の英語教育のどこがどのように方向性がズレているのか?

以前書いた記事

Page 33:なぜ日本の英語教育は「文法偏重」から脱却できないのか?

でも述べましたが、

文法を教える事が問題なのではなく、文法の教え方が問題なのです。

日本の英語教育(特に高校)では、やたらと英文を5文型に分け、英文がその5文型のどれに属するかを分析する事にばかり膨大な時間を費やします。(あと英文和訳)

ちなみに5文型とは

第1文型: S + V
第2文型: S + V + C
第3文型: S + V + O
第4文型: S + V + O + O
第5文型: S + V + O + C

※S: Subject (主語) V: Verb(動詞) O: Object(目的語) C: Complement(補語)

の5種類で、英文にいちいち下線を引いてどの部分がSだとかどの部分がOだとかあーだこーだ言って、「よって、この英文は第4文型である」とか結論づけて自己満足するわけですね。

高校の英語の先生にはこの5文型(とあと英文和訳)をやるのが大好きな先生が少なからずいらっしゃいまして、そのおかげで高校生たちは勉強時間の大半を5文型(とあと英文和訳)のために費やす事になるのですが、これがはっきり言って時間の無駄なのですね。

語学学習において文法を理解している事は確かに大事なのですが、

「正しい文法で英語で書いたり喋ったりできる事」

と、

「この5文型の分析ができる事」

の関連性はかなり薄いです。従って、5文型に膨大な時間を費やしても、会話も身につかないし文法も身につかないという、「ただの時間の浪費」になるのです。

 

【じゃあどうすればいいのか?】

今まで学校で教えられてきたやり方が文法の勉強にすらなっていないというのなら、どうやって文法を覚えればいいっていうんだ?と思う人も当然いらっしゃるでしょう。

でもこの疑問に関する答えはいたってシンプル。

「実践で役に立つ英語を身につけたいのなら、それに沿って実践で役に立つ形で文法を覚えろ」です。

「実践で役に立つ」とは何なのか?それは、

「読んだり聴いたりするだけでなく、自分の頭で英文を組み立て、それを書いたり口に出したりして表現する事」

ができる事を言います。それができなければコミュニケーションなど成り立たないからです。

文法が間違ったままでもいいから、まずは自分で英文を書いたり、英語で喋ったりしてみる。
すると間違って覚えている部分が浮かび上がってくるから、それを英語のできる人に修正してもらう。

英語を使う→間違いを修正する→英語を使う→間違いを修正する…以下同文

これを繰り返す事で、英語で書いたり喋ったりする事自体にも慣れてくるし、文法も徐々に洗練されて正しい文法が身につくようになります。

ちなみに、英語のネイティブスピーカーでも子供のうちは例えば

Goの過去形をWentではなくGoedとかWentedとか、間違った文法の英語で喋るのですが、徐々に間違いが直り、次第に洗練された英文法を使いこなすようになっていくのだそうです。

ネイティブですら最初は間違えた文法のまま喋るのに、ノンネイティブの僕らが最初から完璧な文法で喋れるわけがないのだから、まずは間違ったままでも喋ったり書いたりして、使いながら間違いを修正すればいいのです。英文に線を引いてSVOCの印をつけ、5文型にカテゴライズするなど、時間の無駄です。事実、SVOCの5文型を「極めた」東大生たちは先述の通りロクに英語を使いこなせていないのが現実ではありませんか。

 

【まとめ】

さて、これまで3つの記事に渡って「語学の成果を可視化するための方程式」をテーマにいろいろ書いてきましたが、「結局の所、語学を独学でやる時に何に気をつけたらいいのか?」を簡単にまとめようと思います。

語学を成功させるためには、

・十分な時間を費やす事(学習時間)
・学習内容がちゃんと理解できて覚えていられるものである事(吸収率)
・学習内容が自分の目標とちゃんと関係のある内容である事(関連度)

この3つを意識してください。

上手くいかない場合、大抵この3つのうちのどれかの要素が欠けているはずなので、「自分には語学の才能がない」と諦める前に、もう一度自分の学習を客観的に振り返ってみるとよいと思います。

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