Page 27:なぜフィンランド人は英語ペラペラなのか?

【英語が得意なフィンランド人たち】

フィンランドをはじめとした北欧諸国にはそれぞれの現地語があり、アメリカやイギリスのような英語圏ではありませんが、よくネットや本やテレビでは北欧諸国は非英語圏なのに英語の上手な国としても紹介されています。

そして実際、僕自身の経験や知人友人から聞いた話からしてもやっぱりそうだなと思います。

僕がフィンランドに初めて来たのは去年の8月で、その時は旅行でフィンランド人の友達の所に遊びに行っていました。その時会いに行った友達とは英語でやりとりをしており、紹介してもらったその子の友達や家族もほぼ全員英語が喋れる人たちで、フィンランド語が喋れなくてもコミュニケーションには特に困りませんでした。

他にも、いろいろ例があります。

僕の友人の中にはユーラシア大陸を何か月もかけて周った事がある人がいるのですが、ロシアでは英語が喋れる人を見つけるのに一苦労だったのに、そのお隣のフィンランドに入った途端にやけに英語が通じるようになったとかいう話を聞きました。

また、僕の日本人の女の子の友達には彼氏がフィンランド人という子がいるのですが、やはりその彼氏も英語ペラペラです。

このようにフィンランド人は英語が流暢である場合が多く、フィンランド人と直接英語で話した事のある人であれば誰しもがそう思う事だと思います。

 

【英語がペラペラなのは”学校教育”のおかげ?】

ではなぜフィンランド人は英語が得意な人が多いのか?よく本やネットの記事などでは、「フィンランドの教育の質がいいから」というのが理由として挙げられています。

ふむ、そういわれてみるとそんな気もしなくもないかも?

そもそも、大半のフィンランド人の第1言語であるフィンランド語は、ABCのアルファベットこそ使っているものの、言語の系統としてはウラル語族という全く異なる言語で、英語と文法も単語も発音も似ていません。(ちなみにフィンランドにはスウェーデン語圏も存在するので、フィンランド人だからといって全員がフィンランド語ネイティブというわけではありません)

その一方で、フィンランドのお隣スウェーデンで話されているスウェーデン語は英語と同じくゲルマン系の言語であり、文法構造はほぼ同じで似ている単語もたくさんあります。似ているからスウェーデン人にとって英語は習得しやすい。

英語と似ていないフィンランド語を母語として話すのに、スウェーデン人たちとひけをとらないほどの高い英語力を身に着けているのは、やはり教育の質がいいからだろうと考えるのは自然な事かもしれません。実際、国際学力調査のテスト(PISA)でもフィンランドは優秀ですし。

僕も以前はフィンランド人が英語が喋れるのは教育のおかげだと思っていました。でも、実際にフィンランド人たちとの接点が増えるようになってから、その考えが段々と揺らいでいったのですね。

 

【スウェーデン語を喋れないフィンランド人たち】

僕が今年の8月にフィンランドのスウェーデン語圏で生活をし始める前までは、僕と関わりを持つフィンランド人のほとんどはフィンランド語圏の人たちでした。そして彼らとのコミュニケーションを通して気づいた事があります。スウェーデン語が喋れないフィンランド人がたくさんいると。フィンランドではフィンランド語だけでなくスウェーデン語も公用語であり、学校では英語に加えてスウェーデン語も必修の言語であるというのに。

僕がスウェーデン語を喋れるという事がわかると、「じゃあちょっとスウェーデン語でも喋ってみようか」と誘ってきたフィンランド人がこれまでに何人かいましたが、その中で僕より上手だったのは1人だけでした。中には

(´Д`)ハァ… 一応私、学校でのスウェーデン語の成績は優秀な方だったんだけど…_| ̄|○

と、自分の実際のスウェーデン語のスピーキング力にガッカリしている人もいました。

誘ってきてないフィンランド人も、「スウェーデン語」と聞くと急に

「アワワワ……((( ゚Д゚)))……いや、あの、ちょっと、、、スウェーデン語は苦手なんです。。。」

みたいな反応になる事もしばしば。なんか日本人が「英語」と聞いた時の反応とちょっと似てる気がします。

逆パターンもあります。僕は現在フィンランドのスウェーデン語圏に住んでいるのですが、ここで僕は何人もの「フィンランド語の喋れないフィンランド人」に出会いました。中には、「いやぁ、学校で何年も何年もフィンランド語を勉強したけど、結局な~んも覚えちゃいないよ」なんて発言をする人も。

この事をきっかけに、フィンランドのスウェーデン語教育やスウェーデン語圏でのフィンランド語教育の成果は日本の英語教育のそれと大した差はないのでは?と思ってしまったのです。

フィンランドの学校教育で、英語の教え方とスウェーデン語の教え方はあまりにも異なっているのでしょうか?そんな事はないはず。大体同じように教えているはずです。それなのになぜ、フィンランド人は英語はほぼ全員が上手なのにスウェーデン語は喋れないという現象が起こるのでしょうか?

もしフィンランド人が英語が上手なのが学校教育の質の良さが理由なのだとしたら、スウェーデン語も英語と同じぐらいペラペラになっていなければおかしいと思うのです。

 

【その言語を使うのが当たり前な環境になっているか?】

フィンランド語を第1言語とするフィンランド人たちにとって、英語とスウェーデン語はどちらも学校教育における必修言語であるという点では同じですが、決定的に違う点があります。それは

・その言語に必要性を感じていて、その言語を使うのが当たり前の環境になっているかどうか

です。

フィンランド語は話者数がせいぜい530万人程度しかない超マイナー言語です。スウェーデン語も同じく1000万人にも満たない程度にすぎません。という事は、フィンランド語やスウェーデン語しか喋れなかったら、2つ併せても2000万にも満たないような小さなビジネスマーケットしか相手にできない事になってしまいます。こうなると、稼ぐためには必然的に外国も相手にビジネスをする必要があり、世界規模でメジャーな言語である英語の必要性が出てくるのです。

フィンランドでは既にITなどの一部の分野においては、社内の公用語が英語になっているのが普通だそうですが、「その方が他国からも欲しい人材が手に入る可能性が高まるからだ」という事でした。社内の公用語が英語とまではいかなくても、外国人を相手に英語を話さなければいけないという事はフィンランドにおいてはどの業界でもよくある事です。

ほとんどのフィンランド人からしてみたら、別にスウェーデン語が喋れなくてもそれほど困りません。フィンランドの国民のほとんどはフィンランド語を喋るし、スウェーデン人やスウェーデン語圏のフィンランド語を喋れないフィンランド人たちはほぼ全員が英語ペラペラ。

だから

・フィンランド語
・英語

が喋れていれば、フィンランド人は普段の会話には困らない。

要は、「自分の普段の生活に必要な言語が喋れたらそれでOK」という事ですから、「日本語しか喋れない日本人」と本質的には大差はないのではないでしょうか?日本人も日本国外にでも行かない限りは、日本語さえ喋れていれば生きていく分にも働く分にも特に問題のない人がほとんどでしょう。

生活に必要な英語は、学校教育以外からも自然に入ってきます。テレビで英語圏の番組がフィンランドでもそのまま流されるのは当たり前。吹き替えされている事はほとんどなく、フィンランド語字幕がついているだけ。最近はオンラインゲームで海外のプレイヤーと遊ぶ事とかが英語を覚えるモチベーションになる事もあるみたいです。

アフリカやアジアのいくつかの国々のように英語圏の国の植民地にはされてはいないものの、英語は既にフィンランド社会に当たり前のように浸透しているのですね。

というわけで、ほとんどのフィンランド人にとっては、

英語
→できるととても便利、できないと行動範囲が狭まる可能性が大きい

スウェーデン語
→できると一応便利、だけどできなくてもそんなに困らない

というのがそれぞれの言語に対する認識であるとみてよいと思います。

例外は、

「親のどちらか片方がスウェーデン語ネイティブ」

で、

「フィンランド語とスウェーデン語のバイリンガル環境で育った」

というような人たち。

これは日本に住んでいる日本とアメリカのハーフの子が日本語と英語を同時に覚えるのと同じような感じで、どちらの言語も幼少期から同じぐらい大事にするので、どちらもネイティブ言語として定着するのでしょう。

結局、ここでも重要な要素となっているのは「その言語を使う環境」である事がわかります。

 

【学校の英語教育改革だけでは不十分】

日本の英語教育では、特に高校では教科書の英文をノートに写してSVOCの英語5文型に当てはめて日本語に訳して…みたいないわゆる「文法訳読式」の授業がいまだに行われています。(中学ではだいぶ改善された所がありますが)そして大学受験の英語もその「文法訳読式」の授業を前提にした問題が試験に出されているので、そういったテストでいい点とっても実践で使い物にならない、「何のために勉強してきたんじゃ」状態になるケースがこれまで多発してきました。

しかし最近は日本でも学校での英語教育の「大改革」が行われると話題になっています。なんでも

「読む」
「聴く」
「書く」
「話す」

の4技能全てをバランスよく見るテストを導入し、学校での英語教育もそれを前提としたものに修正すべし、というのが文部科学省の求める大まかな枠組みのようです。

アイディア自体はいいと思います。英語に限らず語学というのは本来4技能全てをバランスよく鍛えるべきであり、それをやらずして

「読むのはちょっとわかるけど聞き取れません」
「聴いてる時はちょっとわかるけど、喋れません」

というのは、それイコール「その言語が身についていない」という事を意味するからです。言語学習において4技能のバランスは「絶対不可欠」といってもいいほどだと僕は考えています。

ただ、もし文部科学省の方たちが目指しているものが

「フィンランド並みのレベルで国民の誰もが英語を使いこなせる日本社会」

だったのだとしたら、仮に学校の教育改革が彼らの思い通りにいったとしてもそれだけでは実現は厳しいと思います。なぜなら、学校で英語を学んでも社会に出てそれを使う環境が整っていなければ、結局は「こんなモンいつ使うんじゃ」状態になり、

「フィンランドの英語教育」

ではなく、

「フィンランドのスウェーデン語教育」

のようになりかねないからです。

もし日本の学校での英語教育をフィンランドのレベルで成功させたいのなら、おそらく学校だけでなく「社会全体に英語を浸透させる」という作業も並行して行う必要があるでしょう。

 

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