北欧の進路相談!スウェーデン人が高校進学で考えてる事

前回の記事

に引き続き、北欧のYoutuberネタです。

今回紹介するのはスウェーデン人のClara Henry(クララ・ヘンリー)さん。

ユーチューバー、ブロガー、テレビ出演、本の執筆など多方面で活動している人なのですが、そんな彼女がこの時期10月に作ったのが以下の動画。

“3 saker jag önskar att jag visste i mitt gymnasieval”
(私が高校選びの時に知ってたらよかったと思う3つの事)

この動画が作られたのは今から2年前の2017年のようですが、10月というとスウェーデンでは中学生の高校選びの時期だそうで、どういうわけか2019年の今、僕のYoutube上でもオススメ動画に挙がってきたのでした。

んで見てみると、これも前回の記事と同様、意外と日本とおんなじ事やってんのね~みたいな印象を受けるシーンが何か所かあってけっこう面白かったので紹介しようと思います。

今回は前回みたいな一問一答形式ではなく彼女が一呼吸も入れずに喋り続けるという形式になっており、大事なトコだけピックアップして紹介するのが難しいので、この際だから全部日本語に直しちゃいましょ。


高校選びにおける9つの都市伝説(0:00~)

クララ:「カッレ、私がこの教育庁とのコラボビデオを作る事について、この前なんて言ってたっけ?」

カッレ:「君のオーラといい感じなハーモニーになってんじゃないか?」

クララ:「え、何、どゆ事?オタクオーラ全開って事?」

カッレ:「いやー、うーん、たぶんちょっとw」

【これ以降の喋りは全てクララ】

ヤッホー、みんな。今日はカッレが後ろに座ってんだよね。ハロー。

ちょっと考えてた事があるの。今ってもう10月で、この時期って高校願書提出の時期なんだよね。で、今年願書を出す子たちは2002年生まれ!

あれー、おっかしーな。2002年生まれの子たちってまだ生まれたてで歩き始めたばっかりじゃなかったっけ?いやいや、私も知らない間に歳とったのね。現実を受け止めなきゃ。

さて、さっきも言ったように今は高校願書提出の時期!今頃スウェーデン中の2002年生まれの子たちはみんなパニックなんじゃない?いや、全員かどうかは知らないけど。。。たぶん一部の子ぐらいならね…。

って事で、今回は教育庁とコラボしちゃいます!

今回のお話は高校進学の際のプロセスについて。毎年この時期になるとね、私、みんなから聞かれるの。高校選びどうしてたのかって。で、高校選びに関するよくわかんない都市伝説っていっぱいあって、これって誰もが何度も耳にしてるんじゃない?

これ、マジで「高校都市伝説」とか言われてんだけど、今日はこれ全部ぶっ潰そうと思うのね。この都市伝説はみんながよく耳にするやつは全部で9つあって、この9つは実は全部嘘なの。んじゃちょっと読み上げてみよっか。

都市伝説その1:「高校選びであなたの人生は決まってしまうんですよ」

これについては後で話しましょ。今はとりあえず全部読み上げるだけ。

都市伝説その2:「自分の身の丈にあった学校を選びましょう」 
都市伝説その3:「大学に行って将来の可能性をより多く残すため、進学校を選びましょう」 
都市伝説その4:「成績が良い人は職業訓練学校に行くなんて、せっかくの高い内申点がもったいない!」 
都市伝説その5:「一度職業訓練学校に入っちゃうと、後で大学に入りたくなっても入れないよ!」 
都市伝説その6:「高卒だと仕事なかなか見つかんない」 
都市伝説その7:「海外で働く事を考えてるなら、職業訓練学校はやめときなさい」 
都市伝説その8:「職業訓練学校は勉強が嫌な子たちの行くトコですよ」 
都市伝説その9:「徒弟制度ってのは他に選択肢のない子たちのためのモンなんです」

どう、聞き覚えある?私メッチャあるんだけど!高校選びの時って、ホントこういう雑音が頭から離れない!今となっては落ち着いてきたから、ここは一つホントかどうかチェックしてみましょか。ってか間違ってんだけどね。

当時のクララさん(2:12~)

それじゃ、今から私自身の当時はどうだったのかのお話しまーす。

私の学校選びの基準はかなりの部分が親からのプレッシャーからきてます。自分の娘たちが大学に行けるようにって。これを聞くと、視聴者のみんなは私の親が高学歴のエリートとかなんじゃないかって思うかもしれないけど、実際はお父さんもお母さんもどちらも大学には行ってないのね。たぶん自分が大学に行ってないから自分の子供には行かせたいって事なんだと思う。

お母さんは「大学に行って将来の可能性をより多く残しなさい」っていつも言ってた。これ、まさに都市伝説その3ね。で、当時の私はこれを信じちゃってた。

15歳の時はジャーナリストになりたいって思ってた。11歳の時から既に決まってた夢。だから中3の時、自分に将来なりたいものがあるのが嬉しかった。だってこの時点で周りの他の子たちは自分たちの進路の事についてゼーンゼン考えてなかったんだもん。

私は決めてた。メディアの勉強したいって。ちょうどその頃、モーンリーケ(地名)っていう私の地元近くの学校が良さそうって聞いて、実際そこのメディア関連の教育プログラムもよさそうだった。お母さんと一緒に学校の見学に行って、そこでのカリキュラムがどんな感じか聞いて、家に帰る頃には「ここだ!」って思ってた。話を聞いてるだけで「こんなラジオ番組作ってみたい」とか「こんな撮影したい」とか、いろんなアイディアが湧いてくるし、もうこの学校に願書出すって思ってた。

だけどお母さんにこの事言ったら、こんな風に返されちゃった。

母:「アンタ、本気で言ってんの?こんな高校通ったって大学にいけないじゃないの!」

実際にはこれも都市伝説その5で、実際には在学中に英語や数学も履修してれば普通に大学にも行けたんだけどね。

だけどこれで何だか迷いが生じちゃった。自分としてはこの学校がいいって思ってたけど、その一方でお母さんには反対されてる。やっぱりお母さんをガッカリさせたくはない。だから迷ってた。同時に、自分のやりたい事を諦めなきゃいけないのかと思うとなんだか悲しくもなった。自分で選んだ学校は自分には合ってないのかなって。

動画タイトルを見ればもうわかると思うけど、これから言いたい事は3つね。

「今思えば、あの高校選びの時に知ってたらなって思う3つの事」

知ってりゃよかった1:自分の進路を決めるのは自分!(4:28~)

まず、自分の進路を決めるのは他でもない自分自身なんだって事にあの時自信を持ててたらなって思う。もちろん周りの人の意見も聞かなきゃっていうのはわかるけど、でも最終的にはやっぱり自分の思う道を進まなきゃ。だって自分の人生なんだもん。自分の人生で何をやりたいか。本能に従う事が大事。こういう風に当時考えられてたらなぁって思う。

えっと、で、話の続き。私、当時は典型的な優等生タイプの女の子で、本の虫だったのね。新しい事を学ぶのに時間なんてかからなかったし、論理的思考能力もあったからし、記憶力も良かったから、全教科で最高評価のMVGとるのにも大して苦労しなかったの。あ、ちなみに私の時代は最高評価の表記の仕方は”A”じゃなくて”MVG”だったんでヨロシク。

勉強はしたけど、大してキツくはなかったのよね。だから高校選びの時期になった時、周りのみんなは私に「アンタの成績だったら、進学先はこの学校でしょ!イェーテボリ市内で一番レベルの高い学校!」みたいに言われた。で、それよりもレベルの低い学校を選ぼうモンなら「せっかく取った良い成績が無駄になる!」となる。これも都市伝説ね。

上手く言えないけど、「良い成績が無駄になる」って何なの?だってそうじゃない?私はそう思う。高校の願書提出って時間のかかるものなのよね。高校見学に行って、イェーテボリ市中の高校から資料フォルダをかき集めて、家に帰る頃にはバッグが2つフォルダでいっぱいになるぐらいだった。考えただけでもやってられないでしょ。

これも知ってりゃよかったって思う事なんだけど、こんなに資料フォルダかき集める必要なかったのね。例えば、将来建設関連の仕事がしたい人は数学のレベルが高い事で有名なルレオ高校に行く必要はないでしょ。(やりたい事と学校の数学は関係ないから)だからいいの、そういう考え方で。そういう事。

で、私はいろいろ考えた後、イェーテボリの小さい学校で社会科学科のコースしかない所を見つけたのね。そこでは「グローバル視点」の社会科学か、「ジャーナリスト系」の社会科学かを選べるんだけど、そこで私、決めたの。「ここだ!」って。

これで全部うまくいくと思ったし、実際にもうまくいった。だけどちょっとミスっちゃったのは、3年次にジャーナリズム関連のクラスをいくつか取り損ねた事かな。で、その代わりに英語と数学をとったの。実は私、お父さんがイギリス出身だから元々英語はできたし勉強する必要もなかったんだけど、「3年次に英語も履修しましたって成績書類に載った方がカッコイイじゃん!」って思うじゃん?

それに、どっかで気持ちが揺らいで「やっぱり医者になりたい!」って思うかもしれないし。そうなったら、数学Ⅲがいるのよね。だけど、私結局「医者になりたい」なんて考える事はこの後一度もなかった。当時何考えてたのかなーって思う。普段自分の人生で後悔する事ってあんまりないんだけど、これははっきり言えるのね。取りたくもない数学Ⅲをわざわざ取った自分は無理してた。

知ってりゃよかった2:好き嫌いで決めてOK!(7:35~)

というわけで、「高校選びで知ってりゃよかった」その2は、進路は「それが楽しそうだから」ぐらいの理由で決めてOKって事。その分野で元々優秀である必要なんてないの。だって私自身の人生を振り返ってみてもそう。思い出してもイライラしちゃう。だってあんなに勉強したのに、私結局大学行ってないもん。しかも親は「それでもいいよ」だって。そう、いざ高校を卒業したら、親からは大学に行けだなんて言われなかった。行かなくてOKだったの。

だから高校卒業後に今住んでるストックホルムに引っ越してきて、持ってる資格は高卒と1週間だけ受けたスタンドアップコメディ教室の修了書だけ。マジでそんだけ。えーと、せっかく取った数学Ⅲ。これ、どうしようか?

結局の所、巷で言われてる高校選びの都市伝説は「大学のため、キャリアのために勉強しなさい」って事ばかり。でも後になって気づいたんだけど、全然そんなの正しくなかった。

職業訓練学校で勉強すれば、卒業後の就職はほとんど保証されてるようなもんだからね。実際にホームページでも確認してみた。「比較的簡単に就職できる仕事:車やトラックの整備士、CNCオペレーター、電車の整備士、機械修理工、看護師、看護師助手、レセプショニスト」

こんなにたくさんあるじゃない!職業訓練学校卒業後に見つかる仕事!みんな知ってた?ここにいるこの人は知らなかったけどね。ところでCNCオペレーターって何?ググってみましょ。検索して出てきたページによると、「CNCオペレーターとは、オペレーティングコンピューターで機械を操作し、金属や木材やプラスチックなどをドリルや刃で細かく形を整える仕事」との事。

こんな仕事があるなんて、私知らなかったわ。人材の需要がたくさんある仕事なのに、その存在そのものが知られてないなんて。

いいね、これ。そういえば私のお母さんの友達に高校の先生をやってる人がいるんだけど、彼女、こんな事言ってた。

「あのね、例えば建設現場で働いてる人たちは学校卒業の次の日には自分の会社を立ち上げて、2日目にはもうお金稼いでるんだよ。立派なもんじゃないか。なのに何で世の中の大人たちは子供を大学に行かせる事にそんなに拘ってるの?」

そうそう。大事なのは仕事ゲットする事でしょ。それから楽しんで仕事する事。この動画を終わる前に、これから今年でも来年でも再来年でも高校願書提出する子たちに言いたいのは、大事な時期ではあるけど、別に人生最大のイベントってわけでもないよって事。

都市伝説その1は「高校選びであなたの人生は決まる」とか言ってるけど、全然違うから。高校は自分の教育の基盤として選べばいいだけ。どんな進路を選んだって、必要になれば後から追加で勉強できるし、全然別の進路に方針転換する事だってできる。

本当に大事なのは、快適に学校生活を過ごせる事でしょ。なんか居心地悪いなって思ったら、いつまでも同じトコにいる必要もないんだから。別のコース選び直してもいいし、場合によっては転校しちゃえばいいじゃん。

1つ言えるのは、自分の直感を信じてって事。そうすれば全部うまくいくから。

知ってりゃよかった3:高校選びは別に大ごとじゃない(10:29~)

これが私の「知ってりゃよかった」その3ね。高校選びって大ごとで怖いって15歳の子なら思うかもしれない。だってそれが今後の人生を決めちゃうって思われてるから。でも実際にはそんなんで人生決まらないよって事を知ってれば、何もビビる事はないのよね。

はい以上、私が「高校選びで知ってりゃ良かったと思う事3つ」でした。みんな、動画見てくれてありがとう!それから教育庁さんもね!この都市伝説についてもっと知りたいという人は、gymnasieinfo.seを覗いてみてね。概要欄にリンク貼ってあるから。それじゃあみんな、また来週!じゃあね!

所感(職業訓練学校ディスられすぎ)

はい、以上がクララさんの動画の内容です。北欧の学校選びってすげーフリーダムなのかと思ってたんですけど、意外とスウェーデンでも親からのプレッシャーとかあるんですね。

それから、職業訓練学校が予想以上に舐められてる件も興味深い。日本と北欧の教育制度は違うので単純比較はできないのですが、大学に行く前提の普通科の進学校ではない高校というと、日本の場合は商業高校とか工業高校とかが該当するのかな?

でも、日本で商業高校とか工業高校ってスウェーデンの職業訓練学校と同じぐらいのレベルで「そんなトコはお勉強のできない子が行くトコよ」とか「そんなトコ出ても大学行けないし仕事もないよ」なんて言われてるんだろうか?僕は元高校教師だったので、この辺は高校の先生より中学生の高校進学をみてる中学校の先生とかの方が詳しいかもしれません。

でも実際、僕がまだ教員やってた時の同期メンバーには当時工業高校で先生やってた人もいて、

「うちの子たちは卒業したらすぐ就職するから、大学いく連中より早く社会に出て稼いでるし、下手すりゃ教員の俺より稼いでけっこういい車乗ってるやつもいるしなぁ」

とか言ってたな。日本も大学行って新卒枠でエントリーシート書いて就活するより、商業や工業行って高卒で就職した方が実は仕事ゲットは堅いのかも。

ちなみに、僕のフィンランド人の友達の中には、「フィンランドでも普通科の高校ではなく職業訓練学校に行く子は『そこしか行く所のない 、 お勉強のできない子』みたいなレッテルを貼られる傾向はある」と言ってた人もいました。

国によって程度の差はあれ、やっぱり学歴コンプレックスみたいなのは多少はどこでもあるみたいです。

そんで話は変わりますが、最初に出したクララさんの画像は彼女の他の動画からのスクショなのですが、これはFAQの動画で視聴者からの質問にいろいろ答えてる所みたいです。んで、ちょうどこのスクショを撮ったタイミングで画面左下に表示されてるのが次の質問。

「何で腕時計右手にしてんの?それ、間違ってるから」

日本だけじゃなく世界のどこにでもいるんですね、こういうアホな事言う奴w

別に腕時計右手にしてたって何も問題ないじゃないですか。

なんなら、両手に腕時計して「あ、こっちミラノの時間やった」とか言ってもいいじゃないですか。

まぁ、そういう僕はというと、腕時計左手にしてるんですけどね。