北欧移住の方法にはこんなのもあり?フィンランドのプログラミングスクール、Hive Helsinkiの魅力!

前回の記事

でも予告した通り、今回はフィンランドのプログラミングスクールHive Helsinkiに関しての記事なのですが、この記事は「プログラミングスキルを身につけて北欧に移住したい人」を読者として特に意識して書いています。


北欧に移住する近道はプログラミングにあり

以前書いた記事

でも述べたように、僕は北欧に移住するにはまずは学生ビザで乗り込むのが多くの人にとって最も再現性が高く現実的だと考えています。北欧人と結婚できればそれが一番早いですが、これって誰もが狙ってできる事ではないですからね。

学生ビザでフィンランドに乗り込んだ場合、数ある専攻の中でも仕事をゲットしやすいと言われているのがIT系の分野です。2020年現在、IT業界は人材不足であり、プログラマーの需要は非常に大きいと言われています。また、フィンランドではフィンランド語という言葉の壁の問題が多くの外国人を悩ませていますが、プログラミング関連であれば、少なくともフィンランド語力が足りない事が原因で仕事にありつけないという可能性はグンと下がるでしょう。

キャリアにおけるプログラミングの可能性

そして、プログラミングは海外移住に強いだけでなく、日本でも需要のあるスキルという部分にも注目です。海外移住には「ビザは絶対に下りるかどうかはわからない」という、運に左右される要素もゼロではないため、努力していても、実力があっても必ず成功するわけではありません。でも万が一そうなったとしても勉強が無駄にならないのもプログラミングの強みの1つ。

プログラミング言語というのは世界共通なので、どこの国に行っても同じように使い回しが効きます。逆に例えばこれが僕の日本での前職のように「日本の高校で英語の先生やってました」とかだと、国が変われば事情が変わるから同じように通用しないんですよね。フィンランド人は高卒以上なら基本ほぼみんな英語ペラペラだし、日本人を英語の先生として雇う動機なんて1ミリも生じないわけですから。

最近は日本でも一部のIT企業はエンジニアの待遇が改善されてきている所も少なくないと聞きます。特にWeb系のプログラミング言語で仕事が取れるようになると、フリーランスエンジニアとしてフレキシブルな働き方がしやすくなるそうなので、海外移住に失敗したとしてもまだ日本で就活し直すチャンスは残されてますね。

Hive Helsinkiとは?

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Hive Helsinkiは2019年に設立されたばかりの非常に新しいプログラミングスクール。上のリンクの動画によると、新学期初日が10月の半ばであり、僕がハッカソンで何人かのHiveのメンバーと出会ったのは2019年11月の半ばだったため、Hive勢はプログラミングスクールに入ってわずか1か月でハッカソンに参戦してた事になりますね。

このスクールの創設者はインタビューで「Hiveの卒業生は100%全員IT業界で就職させてあげる。Hiveならそれができる」と力強く語っています。その自信は一体どこから来るのか?その背景を探ってみましょう。

このプログラミングスクールには誰でも入れるわけではなく、選抜試験があります。1万人を超える応募者の中から入学テストを受けるのを許されたのは360人で、実際に入学できたのは142人。合格者は応募者全体の1.5%以下という非常に狭き門。

このスクール、入学テストだけでも丸4週間はかかるという長丁場で、毎日新しい課題が出るそうです。いかにハードなスケジュールかが伺い知れますね。

そして、この熾烈な競争を勝ち抜いて無事入学した人達はどんな学校生活を送るのでしょうか。以下がHive Helsinkiの大まかな特徴となります。

Hiveの特徴1:自主学習&助け合い

まずHive Helsinkiの最大の特徴は、完全自主学習によるプログラミングスキルの習得を目指しているという所。「いついつまでに何々をできるようになっておきましょう」という大まかなガイドラインはあるものの、それ以外はほぼ完全に個々の学生の裁量に委ねられます。この学校に先生は存在せず、教科書もありません。あるのは大まかなガイドラインと課題のみ。

ハッカソンの大会中に僕がHive Helsinkiのメンバーと話していた時、印象に残っているのが次の「Hiveの掟」です。

「わからない事があったら、左隣に座ってる人に聞きなさい。それでもわからない事があったら、右隣に座ってる人に聞きなさい。それでもわからなかったら、Googleに聞きなさい。」

要するに、「全部自分たちでやれ」って事。

こんなんで機能するのか?と思うかもしれませんし、僕も最初はそう思ったのですが、実際これでうまくいくのだそうです。おそらくその要因としては、入学倍率をメチャクチャ高くして、応募者の「上澄み」だけを入学させている所にあると思いますね。

学習意欲が高く、助け合いの精神もある「ポテンシャルの高い人」のみを集め、後はほぼ課題丸投げ的に勝手にやらせる。そうすると、先生からあれこれ教えられなくても自分たちで考えて自分たちで問題解決ができる人材ができあがる。たぶんこういう仕組みなのだと思います。

Hiveの特徴2:ピアレビュー制度

さて、「先生がいない」という事で、ここで1つ疑問が湧いてくる事と思います。「課題の採点とかはどうするの?」と。

ここで出てくるのがPeer review(ピアレビュー)という制度です。ピアレビューとは、ランダムに選ばれた生徒の課題を、別のランダムに選ばれた生徒が採点するという仕組み。採点する側は自分が誰の課題を採点しているのか知らないし、採点される側は誰に採点されているのかわかりません。このため、採点の際に個人的な感情を排除して、えこひいきみたいな変なバイアスがかからないようにするのです。

ピアレビューをする時には、大抵「こういうガイドラインに沿って採点してください」という大まかな指示が与えられるため、その指示に従いながら採点すると、生徒同士でも意外とそれなりの採点内容になります。

僕はHive Helsinkiには入ってないのですが、以前Courseraというオンラインプラットフォームでアメリカとかスイスとかオランダの大学の授業をいくつか受講していた事があり、ここでもピアレビュー制度が採用されていましたので、一応僕自身も直接この制度を経験しています。で、実際にやってみた感想としても、それなりによくできたシステムだと思いますよ。自分でも「しっかりできた」と思った課題には高い評価がついていたし、「イマイチな出来だったな」と思った課題にはやはり辛口目の評価がつけられていました。

Hiveの特徴3:超ガリ勉・ひたすらプログラミング

僕がHiveの学習スタイルで驚いたもう1つのポイントは、その猛烈なまでのガリ勉ぶりです。フィンランドの教育というと、下の動画でも紹介されているように、

「宿題が少ない、もしくは全く無い」、「勉強時間は短い」というイメージがあるかもしれませんが、Hive Helsinkiでは話は別。1日10~15時間ぐらいHiveのキャンパスにこもって勉強しまくるのは普通だそう。

Hive Helsinkiのキャンパスは24時間365日いつでも利用できるようになっているらしく、これは文字通りいつでも勉強したい時にしたいだけできるようにするため、との事。必ずしも24時間ぶっ続けでやるという意味ではありませんが、人によっては朝型の人もいれば夜型の人もいるので、どちらのタイプの人でも同じような勉強量を確保できるようにするためでもあるらしいです。

1日の勉強量が10時間を超えるだけあって、その学習内容の進み方は異様なまでに速いです。Hive Helsinkiでは最初に学ぶプログラミング言語はC言語なのですが、学習開始から数日後には既に「ポインター」が出てきたそうです。「ポインター」はC言語でのプログラミングにおいて特に難しいと言われている項目なのですが、僕が現在在籍しているオーランド大学のC言語の授業ではポインターが出てきたのは授業が始まって2か月ぐらい経った時点でした。いかにHive Helsinkiのペースが速いかがわかるのではないでしょうか。

Hiveの特徴4:学費無料

日本ではプログラミングスクールに通うというと、3か月~半年といった短期間でも数十万円はかかるのが普通ですね。最近は高額なレッスン料を取る所も出てきており、80万円とか100万円とかの所もあります。

アメリカやイギリスなどでもCoding Bootcampというものがあり、ダイエットのライザップのプログラミング版みたいに数か月でぎっしり詰め込むそうです。こちらも日本円でいえば普通に100万円以上が相場だとか。

その点、Hive Helsinkiは学費無料というのがやっぱすごいですよね。このスクールは卒業までにかかる期間の大まかな目安は3年とされていますが、これだけの期間みっちりとやっても授業料タダ。控えめに言っても神☆ 生活費さえ面倒見ればよいという事になりますね。

フィンランドは2017年から「現地語であるフィンランド語またはスウェーデン語で授業を受けない場合、EU圏外の外国人からは授業料を徴収する」という風に方針が変わったのですが、このHive Helsinkiに関しては、カリキュラムは全て英語であるにもかかわらず学費タダだそうです。少なくともこの記事を書いている2020年1月時点ではそう。

Hive勢、ハッカソンで躍進

さて、先日のハッカソンに関するブログ記事で、僕のチームメイトの友達のチームが大会総合優勝したと書きましたが、その僕のチームメイトの友達もHive勢の1人。プログラミングスクールに本格的に通い始めてわずか1か月でこの快挙。(ちなみに優勝賞金は1万ユーロ = 約120万円)

そして、Hiveに入学した142名の枠には入れなかったものの、テスト受験までは生き残ったメンバーを募って結成されたShadow Beastsというチームもあり、彼らもハッカソンに参加していたのですが、こちらも総合優勝とまではいかずとも賞を勝ち取っています。

例えば下の写真の彼もHive勢の1人なのですが、彼のチームはHiveとShadow Beasts両方のメンバーから成る混成チームのようです。ちなみに彼、日本語もペラペラ。

Hive Helsinkiとオーランド大学の比較

さて、ここでHive Helsinkiと僕がこのブログ記事執筆時点で在籍しているフィンランド・オーランド諸島のオーランド大学をちょっと比較してみましょう。

まず最大の違いは言語。Hive Helsinki内では公用語は英語であり、カリキュラムもキャンパス内での生徒同士の会話は全て英語で行われる事となっていますが、オーランド大学は原則それが全てスウェーデン語となります。従って、フィンランドで「プログラミングを学校で学び、その後でIT企業に就職する」というルートはどちらの教育機関でもできると思われますが、スウェーデン語ができない場合はオーランド大学はこの時点で選択肢から消えますね。

仮にスウェーデン語ができたとしても、EU圏外の外国人で英語よりもスウェーデン語の方ができるという人は極めて少ないでしょうから、「英語でOKなら英語の方で」っていうのも十分ありだと思います。もしHive Helsinkiが僕がフィンランドへ飛んだ2017年時点で存在していたら、僕ももしかしたらコッチを選んでたかもしれないです。なんだかんだでね、第3言語で留学するのって結構キツイんですよ。絶対英語のが楽。

それから、Hive Helsinkiとオーランド大学の間には教育機関としての性質の違いもあります。オーランド大学は「大学」と名の付くように、国から正式に「大学」として認可の下りている教育機関なのに対し、Hive Helsinkiはプログラミングスクールではあるものの、少なくとも現時点では「大学」ではありません。

そのため、カリキュラムにも大きな違いがあります。例えば、オーランド大学では「一般教養」の分野の授業もあるので、プログラミングとは直接関係のない「経済学」とかみたいな授業もけっこうあるわけで、プログラミングに集中したい人からすればそういう所に余分に時間が割かれるのは歯がゆいかもしれません。日本で既に大学の学位を持っている人は申請すればいくつか単位を免除してもらえる可能性はありますが、僕はなんだかんだでけっこう非IT系の授業も取っちゃってます。一方で、Hive Helsinkiは完全にプログラミングに特化したカリキュラムなので、「一般教養」的な授業は一切ありません。

Hive Helsinkiに入学したい日本人への注意事項

僕のブログには時々北欧に移住したい人から問い合わせが来るのですが、今回の記事はそのような方々を意識して書いたものです。で、そのような方々はおそらくHive Helsinkiに関しては一定の興味を持っていただけるのではないかなと思っているのですが、ここで少し気を付けていただきたい事があるので、補足させていただきます。

すぐ上の項目でも述べたように、Hive Helsinkiは少なくとも2020年1月時点では国から「大学」としての認可は下りていないので、僕が在籍しているオーランド大学と全く同じように「学生としての在留許可」がフィンランドの移民局から下りるかどうかは僕はわかりません。

Hive Helsinkiに在籍している学生の中で僕が直接連絡を取れる人の中には元々日本と同じくEU圏外のウクライナ出身の人がいるのですが、彼に現在のフィンランドでの在留許可のタイプを聞いてみた所、「学生ビザ」ではなく「配偶者ビザ」との事でした(配偶者がフィンランド人)。従って、彼の例を見ただけではHive Helsinkiに日本人が学生ビザで入れるのかは今の所不透明です。

ただし、上のリンクの動画でのインタビューによると、在籍している142人の内の約4分の1、つまり35人はフィンランド国外の出身との事。この35人全員がウクライナ出身の彼のようにフィンランド人の配偶者がいるわけではないという可能性もあるので、EU国籍もEU系の配偶者もない人でもこのプログラミングスクールに入れる可能性はなくはなさそうです。

また、Hive Helsinkiでは基本的に「わからない事は自分で調べる、または適切な形で質問する事」ができる人が入ってくる事を前提としているので、この辺が気になる人はHiveに直接問い合わせして聞いてみましょう。下にリンクを貼っておきます。

https://www.hive.fi/en/