スウェーデンが2023年に完全キャッシュレス社会へ?

以前書いた記事

で、スウェーデンに旅行に行った時に目の当たりにしたカード払いの徹底具合にビックリしたという話をしました。当時の記事では、僕は最後に

「でももしかしたらあと数年もしたら更に「カードオンリー」が徹底されて、上に挙げた現時点では現金OKの所ですらカードしか受け付けないなんて事になっちゃうかもしれないですね。」

と書いていたのですが、どうやらこれが現実のものとなるようです。


スウェーデンの完全キャッシュレス化、正式に決定

先日このような記事を見つけました。

https://interestingengineering.com/sweden-how-to-live-in-the-worlds-first-cashless-society

この記事によると、スウェーデンでは

2021年から独自の電子マネーを導入し、
2023年からは世界初の完全キャッシュレス社会

となるそうです。

はい、文字通り「完全キャッシュレス」です。
現金での支払いは一切受け付けてもらえず、カードまたは携帯アプリによる電子マネーでの支払のみ有効、という事になります。

何で完全キャッシュレスに?その利点は?

まず、スウェーデン社会の実態として、

・消費者の現金による支払は取引全体の20%を下回っている
・サービス提供者の99%以上がカードでの支払いを受け付けている
・既にスウェーデン社会では現金払いは推奨されていない

などの点が挙げられ、これがキャッシュレス化への追い風となっているようです。

では社会から現金を完全に取っ払い、電子マネーのみで経済を回すという事にはどんな利点があるのでしょうか?

大きく分けると、

・コストカット
・犯罪の抑止

の2つが主なポイントとなります。

まず現金って、その存在そのものがお金かかるのですよね。紙幣を印刷したり貨幣を作るには製造コストがかかる。現金を輸送する時も、輸送車の運転手や、強盗対策のための武装したセキュリティガードを雇うため、人件費がかかる。これを電子化してしまえば、そもそもお金が物体として存在しなくなるので、製造コストも人件費もかからなくなるという事です。

また、上記の記事にも書かれていますが、キャッシュレス化を進めた事で銀行強盗が圧倒的に減ったそうです。そりゃそうですよね。せっかく顔を隠して銃を持ち、いざ銀行に乗り込んでみても、肝心の盗みたいお金がそこに存在しないのだから、そもそも銀行強盗という行為自体が成り立たなくなってきているのです。

銀行強盗以外にも、空き巣とか引ったくり対策にもなりそうですね。日本だとちょこちょこニュースで

「70代の女性のハンドバッグを後ろから近付いてきた男が引ったくり、そのまま逃走した模様。女性はATMからお金を引き下ろしたばかりであり、被害額は約30万円に及ぶと見られます。」

みたいなのが流れてきますが、これもバッグをパクられても現金のように即30万円の損失とかにはならないんですね。バッグは戻ってきませんが、盗まれたカードに関しては、無効化して新しいカード発行してもらえばいいんですから。

他にも、電子マネーには

・いつ
・どこで
・誰が
・誰に
・どれだけの額

払ったか?

という取引の詳細がいつでも追跡可能ですから、脱税対策にもなります。
どこの国の政府もできるだけ多くの税金を国民から吸い上げたいというのが本音でしょうから、政府側からしてみれば、このように取りこぼしをしにくくなるというのは非常においしい所でしょう。

Swishという支払いアプリ

スウェーデンには、国内大手銀行6つが協力して推進している電子マネー支払いシステムがあります。これは

Swish

と呼ばれるもので、以前までは「推奨」されているものだったのですが、これがそのうちスウェーデンでは「必須」のものとなりそうです。下のYouTubeビデオはそのSwishに関するもの。


完全キャッシュレスに対する不安の声も

スウェーデンは前々から世界中の他のどの国よりもキャッシュレス化が進んでおり、国民の大多数はお金の完全電子化に賛成のようですが、そうでない人もやはり一定数存在します。

この最近のトレンドに難色を示している主な人たちは年配の方々です。

「現金以外で払うのは何だか気が進まない」
「テクノロジーの進化についていけず、どうやって使ったらいいかわからない」
「そもそも家にパソコンを持っていないから、インターネット上での支払いができない」

などの不満の声が上がっています。

https://www.bbc.com/news/business-43645676

ちなみに、完全キャッシュレスに反対しているのは年配の方だけではなく、一部の若者からもこの流れに疑問の声が挙がっています。例えば、

「現金払いというオプションを完全に取っ払ってしまうというのはどうかと思う。例えばインターネット自体がダウンしてしまった時とかにどうするのか?」

といった意見です。

上記の記事では、これに対しては

「もう現金なんて誰も使ってないんだからカードでいいじゃないか。カードも現金と同じく盗まれる事はあるけど、保険でカバーが効くから問題ない」

みたいに反論されているのですが、

「インターネットがダウンした時のバックアップとして現金が必要なのではないか?」

という論点に対する答えにはなっていないのがわかります。

僕もここが気になるのですよ。インターネットがダウンする可能性だけでなく、カードやカードの読み取り機が不具合を起こす事だってあるかもしれない。携帯のアプリで支払いができると言っても、外出中に携帯のバッテリーが切れるかもしれない。そんな時に代わりの支払い手段としての現金がなかったら、口座残高としてはたくさんお金があるのに現場では10円レベルの支払いすらもできないというバカバカしい状況に陥りかねないのです。

他にもいくつか記事を読んでみたのですが、

「テクノロジーに不具合が生じた時に現金なしでどうやっていくのか?」

という問いに答える内容のものがまだ見つかっていないです。

なので僕としては、

全体的に電子マネーでの支払いを推進するのはいいけど、現金を完全に撤廃するのは不安が残るのでは?

というのが正直な感想です。

他の国々は?

この「2023年に完全キャッシュレス化」というのは、あくまでスウェーデンの話であり、今の所は他の国でもそうなるみたいな話は僕は聞いていません。僕は同じく北欧であるフィンランドのスウェーデン語圏で生活していますが、スーパーの買い物などで普通に現金払いしてます。周りの人はカード払いが多いですけどね。

もしかしたらスウェーデン以外の北欧諸国や他のヨーロッパの国でもこれぐらい徹底したキャッシュレスになるかもしれませんが、たぶんまずはスウェーデンの様子見になるんじゃないかなと僕は思っています。スウェーデンがうまくいってそうなら導入するし、ダメぽならやっぱやめとこうとなるし。というわけで、今の所はスウェーデン以外はたぶんすぐには完全キャッシュレスにはならないと思います。

とはいえ、もしスウェーデンに旅行などに来られる際は、海外でも支払いのできるカードを最低でも1枚、できれば1枚がなんらかの理由でうまく機能しない時に備えて2枚、もしくはSwishをインストールして使える状態にしておいたスマホを用意しておくとよいでしょう。