語学の独学での学習成果を可視化する方程式(その1):学習時間

以前書いた記事

でもお話しましたように、

「どうやったらスウェーデン語なんていう教材に乏しいマイナー言語を独学で覚えられるのか」

という質問をけっこういただいています。

その疑問に答えるために、今回の記事からより本格的に僕が語学を独学で学ぶにあたって重要だと考えている事をいろいろ紹介したいと思います。そのためにはまずは「大まかな概念」から理解する必要があり、これはスウェーデン語だけにとどまらず語学全般に言える事なので、英語や他の言語を勉強している人にも参考になればと思います。


学習成果は掛け算で可視化せよ

ではまず最初にタイトルにもありますように、早速学習成果を可視化するための方程式を紹介します。それは

学習成果 = 学習時間(時間) × 吸収率(%) × 関連度(%)

です。

さて、ここで注意していただきたいのはこの式は掛け算であるという事です。

学習成果の値を大きくするためには、

「学習時間」
「吸収率」
「関連度」

の3つの要素全てを掛け合わせた時の

「合計値」

が大きくなければならず、どれか1つの要素の数字が大きくても、他の2つの数値が低ければ掛け算全体での合計値は低くなるので学習成果も低くなってしまいます。

例えば、とある言語の勉強のためにこれまで費やした学習時間が

10,000時間

だったとします。これだけ見ればメチャクチャたくさん勉強したように見えるので、さぞ学習効果も高いと思われる事でしょう。

でも、先ほども述べた通り、最終的な学習成果は3つの要素の掛け算の合計です。従って、例えばもしこれが

学習時間(10,000時間) × 吸収率(1%) × 関連度(1%)

だった場合、10,000に1%、つまり0.01を2回かけることになります。

すると、

学習成果 = 学習時間(10,000時間) × 吸収率(0.01) × 関連度(0.01)

学習成果 = 1時間分

と、1万時間の内のほとんどが無駄だったという事になります。

もちろんこれは極端な例ですが、

「いかに膨大な勉強量を費やそうと、努力の仕方がマズければ、その努力はほぼ無意味となりうる」

という現実が、上の式を見ればよくお分かりになるかと思います。

逆に、

「いかに効率の良い学習方法を用いても、十分な学習量を確保しなければ大きな学習成果は期待できない」

とも言えます。

例えば、吸収率と関連度がともに100%だったとしても、トータルの学習時間が5時間であれば、

学習成果 = 学習時間(5時間) × 吸収率(100%) × 関連度(100%)

つまり、

学習成果 = 学習時間(5時間) × 吸収率(1) × 関連度(1)

学習成果 = 5時間分

と、最大で5時間分の学習成果までしか得られないという事になります。

独学での学習においてやるべき事は、3つの要素全てを掛け合わせた「合計値」を大きくする事であり、これができているかできていないかが学習成果の大小に直結するのです。

そして、今回の記事ではこの3つの要素

「学習時間」
「吸収率」
「関連度」

の内の最初の要素、「学習時間」を取り上げ、残りの2つは次回以降の記事でもう少し詳しく説明していきます。

学習時間は「時間」で計算せよ

語学の話になると、

「〇〇語を勉強して何年ぐらいになるんですか?」
「そうですねぇ、もうかれこれ5年半ぐらいになりますねぇ」

みたいなやりとりがよくあると思います。これは言い換えれば、人は語学の学習時間を計算する時に「何年」とか「何か月」で計算しているという事です。

しかし、この数え方は学習成果の管理においてはあまり意味をなしません。先ほど紹介した方程式の時点で既に気づいていた方もいらっしゃるかもしれませんが、学習時間は「月」や「年」ではなく「時間」で測るべきだからです。

例を挙げましょう。AさんとBさんとCさんは3人とも英語を勉強していたとします。

これまでに、

Aさんは1年
Bさんは2年
Cさんは5年

勉強してきました。さてここで、

「この中で一番たくさん英語を勉強したのは誰でしょう?」

という問いがあったとします。

これだけ聞けば、ほとんどの人は

「Cさんが一番勉強した!」

と答えるでしょう。なぜなら、Cさんの英語学習の「年数」が5年と、一番長いからです。

しかし、この3人の英語学習の詳細が次のような感じだったとしたら、どうでしょうか?

・Aさんは毎日2時間欠かさずに1年間勉強し続けました。
・Bさんは1日1時間の勉強を2日に1回のペースで2年間勉強しました。
・Cさんは1日5時間の勉強を月に1回のみ行うというスタイルを5年間続けました。

これらを式に直すと、

≪Aさん≫
学習時間 = 2(時間) × 365(日) × 1(年)
学習時間 = 730時間

≪Bさん≫
学習時間 = 1(時間) × 182(日) × 2(年)
学習時間 = 364時間

≪Cさん≫
学習時間 = 5(時間) × 12(日) × 5(年)
学習時間 = 300時間

となります。

この条件下では、「1年しか勉強していない」Aさんの方が、実は「5年も勉強している」Cさんよりも倍以上勉強していた事になります。

これは、たとえ

「学習年数」

が同じでも、

「1回あたりの学習時間」
「学習頻度」

の2つの要素が変われば、

「合計の学習時間」

はいくらでも変わってしまう事を意味します。

こうしてみると、

「何年勉強したか」

がいかにいい加減な学習時間の測り方であるかがわかるでしょう。だから学習時間はあくまでも「時間」で測る必要があるのです。

学習時間は「実際に行われた学習時間」で計算せよ

学習時間の管理は「時間」で管理するだけでは十分ではありません。

「学習活動が実際に行われていたかどうか」

も管理しなければ、せっかく「時間」で数えていても自分の学習量を把握した事にはなりません。

例として、次のような「落とし穴」の話をしましょう。

Dさんは、1回60分のスカイプ英会話レッスンを週に1回のペースで2年続けました。

この条件であれば、1回1時間のレッスンを1年で52回(←1年は52週間だから)、それを2年続けた事になるので、レッスン合計時間は

1(時間) × 52(週間) × 2(年) で、

104時間

となります。

でもDさんは、違和感を覚えていました。

「これまでにスカイプ英会話を100時間以上やった。でも喋る練習を100時間もやった割には、あまりスピーキングの力がついた感じがしないなぁ」

と。

それもそのはず。Dさんの担当についてくれていた英語の先生はとてもお喋りな人で、先生とDさんが1回のレッスンで喋る時間の割合は

先生 : Dさん
9 : 1

だったのです。

つまり、これは1回のレッスンにつき先生が54分喋り、Dさんが実際に喋っていたのは6分だけという事になります。

「実際に英語で喋る」という行為を行っていたのは1回のレッスンにつき6分ですから、この条件で計算しなおすと、

6(分) × 52(週間) × 2(年)で、
624分。

これを時間に直すために60で割ると、

10.4時間。

2年もレッスンしたのに、「実際に英語で喋る練習」をしていたのは100時間ではなく、たったの10時間だったのです。

この「英会話」の例のように、

「リスニング」
「スピーキング」

複数の要素が混ざったものは、どちらの要素にどれだけの時間が割り振られていたのかも、大まかでいいので把握しておくべきです。

なぜなら、同じ100時間のレッスンでも、相手と自分の喋る時間の割合が

5:5 なのか
7:3 なのか
9:1 なのか

によって、「自分のスピーキングの実際の練習時間」は大幅に変わってしまうからです。

こういった計算ミスは特にスピーキングの練習量を数える時に起こりやすいと思います。

従って、スピーキングの練習にどれだけ時間を費やしたかを数える時は、「英会話のレッスンの時間」の数字をそのまま使うのではなく、

「自分の頭の中で英文を組み立てる作業をしている時間」
「自分の口で英語を実際に喋っていた時間」

といった、

「本当にスピーキングの練習になっている時間」

のみをカウントするようにしましょう。

これができていれば、Dさんは

「おかしいな。喋る練習を100時間もしたのに何でスピーキングが大して上達しないのだろう」

ではなく、

「よくよく考えてみれば、レッスンの最中はほとんど先生ばかり喋ってたから、自分の発言時間は2年やっても合計で10時間程度だったな。そりゃこんなペースでは喋れるようにはならないよな」

と冷静に自分の学習時間を分析する事ができます。

まとめ

さてさて、いろいろ細かく見てきましたが、結局の所、一番大事な事を一言で表すと、具体的に

「何を」
「どれだけやったのか」
「明確にする」

という事です。

これができれば、自分に現時点で足りている部分と足りていない部分が大体わかります。

でも、今回紹介したのは、あくまで

「学習時間の数え方」

の部分だけで、まだ

「吸収率」
「関連度」

の部分には触れていません。

最初にも紹介した通り、せっかく学習時間を多く確保してもこの2つの要素の数値が低いとほとんど意味がなくなってしまう事をお忘れなく(^ω^)

それでは、次回は

「吸収率」

のお話をしようと思います。

お楽しみに~^^