北欧が自殺大国と呼ばれる本当の理由

僕は2019年現在、北欧・フィンランドのオーランド諸島に住んでいますが、以前にも他の記事でも何回か書いたように、ここでの生活を始めるまでには5‐6年は準備に費やしていました。2014年にオーストラリアにワーキングホリデーに行ったのも北欧行きの準備の一環だったし、日本で働いてた時も常に北欧に行く事を考えながら過ごしていました。

日本やオーストラリアで北欧行きの準備中だった当時から、知人や友人と話していると、ひょんな事から僕の北欧移住計画の話になる事がありました。すると毎回のごとく聞かれます。

「北欧?何でまたわざわざ北欧に行きたいの?」

と。

僕が北欧の社会の先進的な部分とその魅力を語ると、一応話は聞いてはくれるものの、次のような事を言われる事も少なくありません。

「君の話で北欧が素晴らしい場所だってのはわかったけど、じゃあ何で北欧は世界で一番自殺率の高い国々なんだい?」

さて、

北欧=自殺の国

とはよく言われるのですが、実際の所どうなのでしょうか?
ちょっと調べてみましょう。


世界各国の自殺率

まずそもそも、北欧って本当に世界トップクラスで自殺率が高いのでしょうか?

こちらのWikipedia記事で公開されている最新のデータは2016年時点のもののようですが、

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_suicide_rate

ご覧の通り北欧の国々は1つも20位以内にすら入っていません。

もうちょい下まで行くと、

30位に一足先に日本が登場し、そのちょい下の32位にようやくフィンランドのお出ましです。

34位にアメリカ。
40位にアイスランド。

もうちょいスクロールダウンすると、

51位にスウェーデン。

陽気なイメージのあるオーストラリアと同じ順位です。

更に下を見てみましょう。

74位にノルウェー。
近い順位ではカナダが72位です。

もう1回だけスクロール。

89位でようやくデンマークが出てきました。
ドイツのすぐ上です。

これ、ふと思ったんですが、数年前と比べて結構順位に変動があります。たしか2011‐2012年あたりだと、日本はワースト7位ぐらいだったし、韓国はワースト2位とかでした。フィンランドやスウェーデンも当時はもうちょい自殺率が高く、それぞれ14位と18位ぐらいだったと記憶してます。

しかしそれを差し引いても、昔のデータででも北欧のどの国よりも日本や韓国の方が一貫して自殺率が高いというのは事実ですし、この事から

現代社会において北欧諸国が自殺大国というのは根拠のない思い込み

であるという事がわかります。そりゃ昔はフィンランドとスウェーデンはワースト20ぐらいには入ってましたが、当時から日本のが自殺は酷かったんだし、少なくとも日本は北欧の自殺問題を笑える立場にはないでしょう。

これ、逆の立場で考えてみたらわかりますよね。例えばアメリカとかブラジルとかが

「日本の社会は物騒だぞ!いつ通り魔にナイフで刺されるかわかったもんじゃない!」

とか言ってこようモンなら、

いやいや、お前らが言うなよw
お前らもっと治安悪いだろw
ナイフどころか、銃持っちゃってる系だろw

という事です。

では、なぜ「北欧=自殺」のイメージはこんなにも広まっているのでしょうか?
諸説ありますが、中でも有力であると言われているのが、

「ある人物によるネガティブキャンペーン」

です。

「北欧は自殺大国」は米大統領のデマ

僕は日本にいた時から北欧関連の本は何冊か読んでいたのですが、その中に

『スウェーデンはなぜ強いのか』

という本があります。

そしてこの本には、次のように記されています。

自殺大国スウェーデンという見方が世界的に広まったのは1960年の米国大統領D・D・アイゼンハワーの演説がきっかけだといわれる。
(Peter Vinthagen Simpson, “Anti-depressants cut suicides: Swedish study,” The Local Sweden’s News in English, Oct 23, 2009)
アイゼンハワー大統領は、スウェーデンは自殺率の高い国であり、自殺率の高さはスウェーデンの社会主義の結果であると演説した。当時、スウェーデンは社会民主党が政権を担当していたから、社会民主党政権イコール社会主義の国と、短絡的に見られていたのである。
アイゼンハワーの演説は、1960年当時、ソ連と冷戦下にあった米国の、社会主義・共産主義に対するネガティブキャンペーンの一環だった。社会主義の国は夢のもてない国である事の実例として、当時、自殺率の高かったスウェーデンを引き合いにだしたのである。その後、アイゼンハワーの見方が世界に浸透し、冷戦が終わった現代も、自殺大国スウェーデンのイメージは世界に根強く残っている。

要するに、アメリカの大統領が自分の嫌いなロシア(当時はソ連)の悪口を言いたいがために、都合のよさそうな話を思いつき、ロクに事実関係を調べもせずに公の場でベラベラ喋ったって事です。んで、ロクに自分で物事を調べもしない民衆がそれを鵜呑みにし、世界中に広まった、という流れですね。

スウェーデンやフィンランドには確かに自殺率が高かった事が昔はありましたが、それも極めて一時的な現象です。そもそも、自殺には

・経済的要因(貧しい暮らしでツライ _| ̄|○)
・気候的要因(寒くて暗くてツライ _| ̄|○)
・人的要因(イジメられてツライ _| ̄|○)

などの複数の要因があり、たとえ自殺率の高さが同じぐらいな国が2つあったとしても、その要因は必ずしも同じとは限らないのです。

ちなみに、北欧はよく「寒くて暗いから自殺が多い」とか言われますが、じゃあ同じように緯度が高くて、冬は寒くて暗いのが長く続くという条件のカナダとかアメリカのアラスカ州はどうなんだ?という突っ込みどころが出てきます。でもカナダやアラスカに関しては誰も何も言わない。これ、おかしいと思いませんか?

まぁいずれにせよ、「北欧諸国=自殺大国」のイメージはアメリカ大統領が演説でスウェーデンをディスったのが原因、というのが有力な説のようです。

こうしてみてみると、アメリカ大統領が自分の発言にロクに責任を持たずに他国をディスるのはトランプやブッシュに始まった事ではなく、もはやお家芸とも言えるのかもしれません。

まとめ

はい、ではここまで見てきて、

「北欧は自殺ばっかりの国々」

という噂はデマである事がわかりました。

こういうのがあるたびに毎回思うんですけど、こういう噂に流される人って、自分で調べないんですかねー?情報技術がそれほど発達してなかったアイゼンハワーの時代はまだしょうがなかったのかもしれないですけど、特に今の時代なんて情報は自分でググれば出てくるんだから、

〇〇サンガソウイウンダカラソウナンダトオモッテマシター。

なんて言い訳もだんだん苦しくなってくる事でしょう。

グーグル先生は無料でなんでも教えてくれるんだから、使わないのはもったいないと思います。



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