フィンランドで就職→労働者用在留許可取得までに僕がした事まとめ

僕はこれまで北欧に移住するためにいろいろ頑張ってきたのですが、先日ついにフィンランドの移民局から正式に就労許可が下りました!(フィンランドでは正式には『労働ビザ』とは呼ばず『就労許可』という)

これによって晴れて単なる学生としてではなく労働者としての北欧移住を成功させた事になるのですが、今回はここに辿り着くまでに僕がやってきた事をまとめてみました。

1万4000字超の力作です。
長文を読むのがツライという方は、動画版もありますのでそちらを視聴するのもいいかもしれません。


移住ルート決め

どこの国に移住するにしても、最終的に永住権を目指すのであれば多くの場合は考えられる方法は主に次の2つです。

1:現地人と結婚する(配偶者ビザ)
2:現地の企業に就職する(労働ビザ)

他にも例えばスポーツでオリンピック選手級の実力があれば国籍変更して移住する事も可能ですし、お金持ちであれば国によっては投資家ビザとかもあるでしょう。でもこれらは多くの普通の人には当てはまらないケースでしょうからここでは除外します。

という事で、現実的な手段としては国際結婚か現地就職です。

ですが、結婚は狙った国の人と狙ったタイミングで結婚するなんてそうそうできるものではありません。「別に狙ったわけではないが結果的に国際結婚できた」という人はそれでいいですが、最初から国際結婚狙いに頼った移住計画を立てるとすると、それはかなり運任せな選択肢だと思います。

労働ビザには主に

・現地の企業に直接応募する
・いったん目的の国に留学し、卒業して現地就活する

の2パターンがありますが、いきなり現地企業に採用してもらえる人はなかなかいません。現地採用してもらうのに求められる実務経験と語学力の両方を「移住したい!」と思った時点で既に持っている必要がありますが、大抵の人はその条件を満たしていないからです。

という事で、現時点で特にスキルを持っていない人が移住に向けて

「これから準備したい」
「運に頼らず自分の努力で道を切り開きたい」

という場合、多くの人は必然的に「まずは学生ビザで現地に潜り込み、それから現地就活する」というルートを選ぶ事になります。実際、僕もこの方法で北欧移住を目指す事にしました。


移住先の国探し

移住したい国の候補が複数ある場合、最終的には1つに絞り込まなければいけません。僕の場合は北欧諸国の中から移住先として狙いを定める国を1つ選んだわけですが、最終的にはフィンランドになりました。

移住先の国を決める際に僕が基準にした項目としては、

・その国の移民法がどれだけ厳しいか/緩いか
・学費や生活費をどれだけ抑えられるか
・希望のスキルを学べて、且つ自分が入学可能な大学はあるか
・大学卒業後の現地就活ルートは確保できるのか

などがあり、これらを総合的に判断した結果、フィンランドにしました。

この辺りの更に詳しい話は以前書いたブログ記事に

というのがありますので、気になる方は是非そちらも参考にしてみてください。


現地語の勉強

海外移住において、ほとんどの場合は現地語の習得は必須です。これは英語が広く通用する北欧でも例外ではなく、当然現地語を高いレベルで使いこなせるほど現地での行動可能な範囲は広がります。

僕は実際に日本を出てフィンランドのスウェーデン語圏のオーランド諸島に引っ越してきたのが2017年8月で、移住先をフィンランドにしようと決めたのが2016年の夏の終わり頃でした。

ですが、僕はこれより更に前の2014年の時点から既にスウェーデン語の勉強に取り組んでいました。理由は2つあります。

1つは、スウェーデン語が僕にとって他の言語と比べて習得しやすかったという事。スウェーデン語は英語と同じゲルマン語族という種類の言語なので、文法は英語に似てますし単語も英語と似たものが少なからずあります。僕はスウェーデン語の勉強を始める前の時点で英語は上級レベルだったので、日本語しか喋れない場合と比べて吸収率が高かったです。

もう1つは、スウェーデン語は北欧の現地語の中では最も汎用性が高いと判断した、という事。スウェーデン語はもちろんスウェーデンで通用しますし、フィンランドにもスウェーデン語圏が存在します。ノルウェーはノルウェー語ですが、スウェーデン語と相互理解可能なほどよく似ているので、スウェーデン語が喋れれば少なくともある程度はノルウェー語にも対応できるわけです。

というわけで、僕はスウェーデン語は2014年から1日1時間ぐらいの勉強を独学で続けており、2017年8月に日本を出るまでの間に計1000時間ぐらいは勉強してありました。僕はフィンランドのスウェーデン語圏に現地入りした初日から現地人とスウェーデン語で会話ができ、現地での移民用のスウェーデン語準備コース等には一切通わずいきなり現地語で大学の授業を受け始めたのですが、これができたのは現地入り前までのこの勉強の積み上げのおかげです。

ここで「スウェーデン語を独学でなんてどうやって覚えられるのか」と疑問に思っている人もいるかもしれませんが、それは僕が「英語やスウェーデン語に限らず語学全般に通用する学習理論」を知っているからです。それに関連してこれまでにも語学系の記事を書いているので、気になる方は下のリンクから覗いてみてください。

ちなみに、言語の習得速度には「学習中の言語と自分が既に喋れる言語の距離」が大きく関係していますので、日本語しか喋れない人がスウェーデン語を勉強する場合は上級レベルに到達するには1000時間ではおそらく不十分で、2倍、3倍、もしかしたらそれ以上の勉強が必要になるかもしれません。


留学生活にいくらかかったか

僕の過去のツイートにオーランド諸島で学生生活をしていた頃の出費の内訳を書いたものがあるのですが、この記録によると当時の月々の生活費は日本円にして7万円ぐらいでした。

これに単純に12をかけると年間の生活費は84万円となりますが、当然それ以外にも臨時の出費は何かしら毎年あったりするので、たぶん年間120万円ぐらいは必要だろうなと見積もっていました。

僕の場合、月々の生活費(固定費)とは別の出費で特に大きかったのは以下のようになります。

【2017年】
・スウェーデン旅行(主に現地での宿泊費、外食費、冬物の買い物)

【2018年】
・日本への一時帰国(主に航空券代)
・トゥルク旅行(主に現地での外食費)
・アイルランドで行われた友達の結婚式への出席(主に航空券代)
・ヘルシンキ旅行(主に現地での宿泊費、外食費)
・歯医者

【2019年】
・在留許可延長申請のためのヘルシンキ出張(申請費用、現地での宿泊費、外食費)
・スウェーデン旅行(主に現地での宿泊費、外食費、冬物の買い物)

【2020年】
・在留許可延長申請のためのヘルシンキ出張(申請費用、現地での宿泊費、外食費)
・就活用ポートフォリオ作りのためのメンターサービス利用

【2021年】
・オーランド諸島からフィンランド本土への引っ越し

これらを全部合わせると、やはり年間の出費は確実に100万円は超えているんですね。

僕がフィンランドの企業のIT職で就職が決まって収入が得られるようになって貯金の切り崩しが止まったのが2021年5月で、僕が日本からフィンランド・オーランド諸島に引っ越してきたのが2017年8月でした。この4年弱の間に日本を出る前の時点で用意しておいた貯金がどれだけ減っていたかを見てみたら、約450万円分でした。ただし、2019年の夏には有給インターンシップで3か月で60万円ぐらい稼げてたので、これがなかったら500万円ぐらいは貯金がないと危なかったという事になります。

これだけ聞くとフィンランド移住にはメッチャお金かかるイメージを持ってしまうかもしれませんが、東京で1人暮らしをすると月々15万円ぐらいはかかるらしいですし、そうすると年間180万円です。ちょっと贅沢すると軽く年間200万円を超えるでしょうし、暮らすだけでなく大学も通うとなると学費の分だけ更に費用がかさみます。こう考えると、学費無料のフィンランドでの学生生活は日本と比べて相当経済的に優しい事がわかりますよね。


どうやって貯金したか

僕がフィンランドに来る前までに自分で働いてお金を貯めていた期間は4年間。内訳は次のようになります。

2013年4月 – 2014年3月:日本の公立高校で英語科の教員
2014年6月 – 2015年6月:オーストラリアでワーキングホリデー
2015年8月 – 2017年7月:日本の民間企業で派遣社員

教員時代は月々の額面の給料が25万円ぐらいで、手取りが20万をちょっと超えたぐらい。ボーナスは年に2回あり、1回目は20万円、2回目は40万円ほどもらえたので、

手取り20万円 × 12か月 = 240万円
ボーナス2回分で60万円

という事で、手取りで300万円ぐらいでした。

オーストラリアでのワーキングホリデーは、僕は日本を出る前から英語が喋れる状態で、現地で語学学校には通わず現地入りしてから即働き始めたので、初期投資こそ45万円ほどかかったものの、現地通貨で1年間の合計で2万2000ドルぐらいは稼いでいました。当時のレートだと豪ドルは1ドル90円ぐらいだったので、日本円で約200万円になります。

派遣社員時代は時給払いだったので、月の祝日の数などに応じて勤務日数が多かったり少なかったりしており、それによって月々の給料には多少の増減が発生していました。たまに手取りが20万円を超える事もありましたが、普段は18万円ぐらいだったと思います。なので、手取り分は2年で

18万円 × 12か月 × 2年 = 約430万円

となります。

4年間分の手取りを合計すると

300万円 + 200万円 + 430万円 = 930万円

ですね。

僕は日本にいた時は実家暮らしだった事もあり、手取りの大部分を貯金に回していました。仕事が無かった時期以外は、どんなに少ない時でも1か月の貯金上乗せ分が10万円を切った事は1度もなかったと思います。なので4年もあれば500万円ぐらいの貯金は無理なく用意できたのですね。


大学の勉強(プログラミング)にどう対応したか

北欧の大学のIT科でプログラミングを勉強し始める場合、僕の知る限りでは大抵は最初に扱うプログラミング言語はたぶん次のどれかになると思います。

・C言語
・Java
・Python

僕の在籍していたオーランド大学ではまずはC言語から入りました。1年生の後半にちょっとC++もやり、2年生からJavaの授業も始まる、という流れでしたね。

僕は2014年のオーストラリアのワーキングホリデーの時に既に将来的にプログラミングを勉強する可能性を視野に入れていたので、この時に空いた時間を使ってC言語の勉強をしていました。主に使っていた教材は

C All-in-One Desk Reference For Dummies

というもので、800ページ近くあるけっこう分厚いやつです。これに書かれている説明を元に、自分のパソコンにコンパイラーをインストールしてC言語でプログラムを書ける環境を構築して、それでテキストに沿っていろいろプログラムを書いて勉強してました。

他にも、

CS50

というハーバード大学のコンピューターサイエンスの授業がYoutubeで無料公開されていたので、講義動画をひと通り見ました。

フィンランド・オーランド諸島に現地入りする前までにやってあったプログラミング関連の勉強は主に上記のC for DummiesとCS50の2つで、後は現地の大学の授業で勉強しました。説明が全部スウェーデン語だったのでけっこうキツかったですねー。

先生の説明や授業で用意された資料だけではよくわからない事もけっこうあったので、ある時を境にUdemyのオンラインコースを必要に応じて購入してそれで勉強するようになりました。

最近は僕がオーランド大学に入学したばかりの頃よりもUdemyの教材が英語版も日本語版も充実しているので、これから勉強しようという人は、上記のC for DummiesやCS50じゃなくて最初からUdemyでもいいかもしれないです。


フィンランド現地での就職活動はどうやったか

ポートフォリオ作成編

僕の大学のカリキュラムの予定は2017年8月に始まり2020年12月に終わるというものでしたが、就職活動の準備は2019年の12月には既に取り掛かっていました。

現地人であればここまで早く取り掛かる必要はないと思いますし、僕自身も外国人留学生とはいえ就活準備はもう少し後でいいかなと最初はボンヤリと考えていました。ですが、2019年の11月頃に

「これはヤバい!」

と危機感を覚える出来事が2つあったんですね。

1つはハッカソンに参加した時。ハッカソンとはプログラミングの競技会のようなもので、誰(どのチーム)が一番優れた作品を作れたかを競うものです。ここで目の当たりにした他の出場者たちのレベルの高さに圧倒されて、

うわー、俺、こんな連中と就活でも競争すんのかよ _| ̄|○

と絶望感を味わったものでした。

2つ目は、エンジニア系YoutuberのKENTAさんという方の動画との出会いでした。ある日、KENTAさんの『チュートリアルで作った成果物がポートフォリオとして無意味な理由。』という動画がたまたま僕のYoutubeのオススメに出てきまして、

その動画内には当時の自分のプログラミングやIT業界での就活に対する意識の低さを思い知らされるような内容の指摘がズラリと並び、自分に直接名指しで言われたわけでもないのに

「うわー、これって今の俺じゃん!」

とまたしてもハンマーで頭を殴られたような衝撃を覚えたのですね🔨

でも逆に言えば、「今のままの自分では就活で通用しないだろう」という現実を早い段階で知る事ができたのは良かったですし、これによってやる気に火がついてすぐ行動に取り掛かったのでした。

という事で、早速KENTAさん主催の『雑食系エンジニアサロン』に入りました。そこでポートフォリオの構成やメンターの選び方などを相談したり、過去に業務未経験からエンジニア転職を成功させた方々のポートフォリオも公開されていたのでそれらをひと通り見たりしました。

ちょうどその頃、フィンランドで現役エンジニアとして稼働されているフィンランド人の知り合いの方もいたので、彼にもいろいろアドバイスをもらいました。

雑食系エンジニアサロンのサポートは主に日本のWeb系自社開発の企業への転職を対象にしているので、どの部分までがどの程度フィンランドのIT業界でも同じように使いまわしできるのかも確かめたかったというのもあります。

で、KENTAさんがYouTubeでお話ししている内容がフィンランドのIT業界の就活でどれぐらい当てはまるのか聞いてみたら、かなりの部分がフィンランドでも同じ考え方で通用するだろうという回答をもらえました。業務未経験者はポートフォリオを作ったほうがいいし、高い評価を得られるポートフォリオの基準もほぼ同じでした。

という事で、2019年12月からポートフォリオ作りのために必要な知識を仕入れる基礎学習を開始。2020年5月の終わりごろにポートフォリオ作りに実際に取り掛かり、2020年11月の終わりごろになんとか完成しました。

雑食系エンジニアサロンの人たちは基礎学習からポートフォリオ完成まで全部合わせて半年でできる人が多いのですが、僕は1年もかかってしまいました。これは1週間あたりに費やす勉強時間の差ですねー。

雑食サロンの方たちは仕事をしながらでも週あたり30時間ぐらいプログラミングの勉強につぎこんでる人とか、仕事をいったん辞めてプログラミングの勉強一本に集中した人だと週50時間とかそれ以上とかやる人も普通にいます。

僕は当時フルタイムの学生の最終学年で、ポートフォリオ作りのみに集中できる環境だったにも関わらず週あたり25時間ぐらいしかできていませんでした。こうしてみると、雑食サロンの方々が僕の倍のスピードで進められたのも納得ですね。逆に僕は今思うと集中力が足りなかったなと反省しております。

ちなみに、僕の在籍していたオーランド大学のIT科では、卒業論文を執筆する時に

・純粋に60~70ページほどの論文を書く
・プログラミングで何か作品を作る + 20~30ページほどのレポートを書く

のどちらかを選べるという形式になっていたので、僕は後者を選び、このポートフォリオは卒論用のプロジェクトとしても大学にも提出しました。

当時はインフラをAWS化してアプリを一般公開していたのですが、これにはAWSの利用料が毎月かかってしまうので、就活が終わってからはアプリの公開は終了させています。

ただ、卒論のPDFファイルGitHubのレポジトリはあるので、興味のある方はリンクから見ていただければと思います。


履歴書作成・応募編

ポートフォリオが完成して、大学での卒論の発表会が12月の半ばにあり、それが終わるといよいよ就活の履歴書づくりに取り掛かりました。

ここでも前述のフィンランド人の現役エンジニアの知人にアドバイスをいただき、その際にフィンランドの就活における履歴書の書き方を説明したPDFファイルのリンクも紹介してもらえる事に。元々はヘルシンキ大学がフィンランド人の学生用に作った資料なので全てフィンランド語でしたが、僕はスウェーデン語圏であるオーランド諸島にいた頃からいずれ本土のフィンランド語圏に移る可能性もある事を見越して2017年からフィンランド語の勉強もコツコツやっていたので、時間はかかったものの一応このPDFファイルは全部読めました。

上記リンクのPDFの20~21ページ目にはオススメな履歴書の書き方のサンプルがありますが、これみたいなある程度オシャレなデザインの履歴書を作るには、そういうフォーマットを提供しているサイトを利用するのがいいと思います。僕の場合、resume.ioというサイトを使いました。フォーマットに沿った履歴書を実際に自分のパソコンにダウンロードするのは有料になりますが、自分のニーズに応じてプランを選べるので、費用対効果を考えれば個人的にはそこまで高いとは思いませんでした。

フィンランドでは外国人がIT業界で仕事を探す場合、必ずしも現地語ができなくても英語だけで仕事にありつける可能性もありますが、やっぱり一応現地語も喋れる事もアピールしておいたいいかなと思い、ここでちょっとひと工夫入れました。

外国人がフィンランド語能力を証明するにはユヴァスキュラ大学で行われるYKIテストというものを受けてそれに合格するというやり方が一般的なのですが、今から申し込んでテストを受けて結果を待って、なんて事をやっている時間はなかったので、即席で僕のフィンランド語力を証明できるものとして、フィンランド人と実際に会話している動画をYoutubeにアップロードしてそのリンクも履歴書に貼り付けておきました。下記が実際の動画です。

実際に企業に送った履歴書はコチラ

履歴書が完成したら、いよいよ応募です。どんなサイトを使って求人を探したらいいのかなと思って調べてみたら出てきたのが次の動画でしたが、

最終的に僕が実際に主に使ったのは

・TE-palvelut
・Indeed
・Monster
・Glassdoor

あたりでした。LinkedInのプロフィールは履歴書を用意する時点で整えておきました。

そしていよいよ実際に求人を出している会社を検索して履歴書を送ります。最初に送ったのは2020年12月22日でした。どの会社に何月何日に応募したのかがわかる一覧表を作っておき、1~2週間ほど返事が来ない会社には催促の電話を入れる事もありました。実際にこの電話のお陰で面接まで呼んでもらえたケースもあったので、電話の効果はあなどれません。

2021年2月13日までの間に20社ほどに応募して、その内面接に呼ばれたのは3社。その内2社から内定をいただけました。1社はヘルシンキの企業で、僕が現在在籍している職場で、もう1社はオーランド諸島の企業です。

インターンシップとしての募集と、日本でいう中途採用みたいな普通の募集の両方のタイプの求人に応募したのですが、僕は普通の仕事のポジションの応募は全滅でしたねー。僕のフィンランド人の友人には旦那さんがフランス人でフィンランドでエンジニア就職できたという人がいるのですが、彼は業務未経験の状態からインターンではなく普通の仕事に直接応募して採用されたそうです。なので、いきなり普通の仕事にありつける可能性もなくはないんでしょうけど、やっぱり「まずはインターン生として潜り込んでそこから正社員に昇格させてもらう」というルートの方が間口が広い気がします。

ちなみに、インターンのポジションは普通の正社員の求人と比べれば確かに潜り込みやすいですが、それでも待遇のよい企業での有給インターンを狙うならそれなりに競争率が高くなるので結構頑張る必要があります。僕が現在在籍しているヘルシンキの企業では応募者が2000名を超えていたそうで、1次面接に呼ばれた時点で90名ほどまで絞り込まれ、2次面接もクリアして最終的に採用されたのは20名余りでした。100倍近い倍率ですね。企業のレベルを落とせば当然採用までのハードルは下がりますが、企業によっては無給インターンな事もありますし、さらに酷い場合は搾取目的でインターンを雇ってるだけの悪質な企業も中には一部存在するので、その辺は注意が必要です。

先ほど面接に呼ばれたのは3社と書きましたが、その内1社では面接当日に聞かれる予定の技術的な質問を事前に送ってもらえて、残り2社ではコーディング課題が出ました。この2社の内1社では少し時間に余裕があったのでただ完成したプロジェクトをGitHubに上げるだけでなく、インフラをAWS化してDockerとCircleCIも組み込んだものにしてみたら、面接中にこの部分を絶賛されました。この技術選定は先述のKENTAさんのYoutubeチャンネルで紹介されていたもので、それがフィンランドでもそのまま通用した形になります。

また、上述の「フィンランド人とフィンランド語で会話している動画のリンクを履歴書に貼っておく」というやり方は好評だったようで、面接に呼んでいただいた3社全ての面接担当者さんから

「リンクのフィンランド語の動画見ましたよ!スウェーデン語圏にお住まいなのにフィンランド語も上手ですね!」

とお褒めの言葉をいただきました。


オーランド諸島からフィンランド本土への引っ越しの準備

面接に呼んでもらえた3社の内、ヘルシンキの企業とオーランド諸島の企業から内定をもらえていたのですが、内定の連絡が早かったのがヘルシンキの方だった事もあり、こちらの企業に就職する事にしました。

上記のツイートは3月15日にしたものですが、実際には内定のお話自体はこれより前にいただいていました。ですが、「正式に雇用契約にサイン」という段階を踏むまでは完全に確定ではないという認識だったので、ここに来て初めて引っ越しの準備に取り掛かりました。

3月いっぱいでオーランドのアパートを出る事を大家さんに報告。それと同時にヘルシンキとその周辺でまずはAirbnbの部屋を探しました。

なぜオーランドのアパートからヘルシンキのアパートに直接引っ越さずにいったんAirbnbでの滞在を間に挟んだのかというと、引っ越しの際の情報収集時に下記のリンクの動画で「実際にその部屋を直接訪れて自分の目で部屋を確認するまでは、賃貸契約にサインしない方がいい」というアドバイスがあったからです。

というわけで、まずはヘルシンキの隣のヴァンターという市によさそうなAirbnbの部屋を見つけたので、ここに1か月ほどの宿泊予約を入れ、その間に本格的に部屋探しに取り掛かりました。

僕がヘルシンキ周辺でのアパート探しに使った主なサイトは

https://www.vuokraovi.com/

https://asunnot.oikotie.fi/

の2つです。

ここでヘルシンキの隣にあるエスポーという市で良さそうな部屋を見つけたので、早速アポを入れて大家さんに直接会って部屋を見せてもらう事に。「ここでいいな」とその場で判断し、賃貸契約書にもサインしました。こうして4月の半ば頃にはアパートの確保ができました。

ちなみに、通常であれば引っ越しの際は家具もいろいろ揃える必要があるのですが、僕は今回見つけたエスポーの部屋は家具付きだったので、特に何も新しく家具を買う必要はなく、スーツケースとバックパックのみで引っ越しを完了させました。


業務で使用する技術の確認と予習

僕の場合はヘルシンキの企業にソフトウェアエンジニアとして採用してもらえる事になり、2021年3月の半ばごろに雇用契約書にもサインをしたのですが、僕はこの直後にこの企業さんに

「僕が業務で携わる事になる技術スタックは何か」

を質問していました。

同じソフトウェアエンジニアとしてのポジションでも、どの企業のどのチームに入るかによって使うプログラミング言語やフレームワークは異なります。現場で採用されている技術に自分が使った事のないものがある場合は、なるべく早めに予習しておくのが吉です。

僕の現在の職場ではJavaとAngularを使っていまして、Javaは大学の授業や自分のポートフォリオで既に使っていたものの、Angularは触った事がなかったので、自分でAngularの教材をUdemyで購入し、引っ越し準備期間中も暇さえあればAngularの予習をやっていました。

これをやっていたおかげで、いざ本番の業務でAngularを使い始めた時も比較的すんなり対応できました。


就労許可申請の準備→面談

さて、ここまで来ていよいよ就労許可の申請作業に入ります。僕は2021年5月~8月の期間は正式にはまだインターンシップ生であり、在留許可での身分は学生となっていますが、この期間中は「大学の学位取得に関わる仕事であれば、非EU国籍の外国人学生でも週25時間の就労制限は適用されない」という事を事前に移民局に電話で問い合わせして確認が取れていたので、そのまま働けました。

僕の在籍していたオーランド大学にはカリキュラムの必須項目の中に「インターンシップ」が組み込まれており、僕の場合はこれが該当します。しかし、8月以降学生でなくなってからも働き続けるためには、「労働者としての在留許可」という新たな在留許可カードが必要でした。

僕の学生としての在留許可は2021年8月14日に期限切れになる事がわかっていたので、会社に事情を説明し、8月以降の正規雇用の契約書の作成をお願いし、即サイン。その時に給与額の希望も聞かれましたので、業界のスタンダードとなる給与額が載っているサイトを参考にし、その額でお願いしたらすんなり通りました。

フィンランドの移民局の公式HPの「学位取得後の就労許可」というページで申請に必要な書類をひと通り確認し、書類を用意したらEnterFinlandというページで自分の該当する在留許可の申請手続きをします。

そして、この申請の時に気を付けた事が3つあります。

1つ目は、PDFの添付ファイルを少し余分に用意する事。残念ながらEnterFinlandのネット手続きの入力フォームには(少なくとも2021年7月時点では)少々システム上の欠陥がありまして、これに対応するために余分にPDFファイルを自分で作成する必要があります。

例えば、「無犯罪証明書を添付する欄」というのがあるのですが、これが該当するのは在留許可の申請が初めてで且つまだフィンランドに入国していない人のみです。僕の場合、在留許可の申請は過去に何度もやっているし、とっくにフィンランドに入国済みなのでこの無犯罪証明書は用意する必要はありません。でも、システム上はここにファイルを添付しないと僕のように提出義務のない人でも先へ進ませてもらえないようになっているのです。これは明らかにシステム上の欠陥です。

なので、「僕は既にフィンランドに合法的に入国・滞在しているし、在留許可の申請はこれが初めてではないのでこの書類の提出義務はありません」みたいな事を書いたPDFファイルを作成して、無犯罪証明書の代わりにそれを添付しておきました。これによって、機械的に発生する「あなたは『無犯罪証明書』の欄にまだ添付ファイルを貼り付けていません」というエラーメッセージを回避しました。

2つ目は、申請費用をその場で払ってしまわない事。必要項目を全て記入して確認画面に移ると、

・今この場で電子決済する
・移民局での面談時に払う

のどちらかを選べます。

「今この場で払う」を選ぶと、場合によっては移民局に面談に行かなくても全てオンライン上で手続きが済んでしまう事もあるのですが、それは移民局が決める事なので、「今この場で払う」を選んでも結局は「面談のために移民局に来てください」と言われる事もあり得ます。

一方で、「移民局での面談時に払う」を選ぶと、必ず移民局に直接足を運ばなければいけません。なぜ僕がこちらを選んだのかというと、申請を却下されるリスクを減らすためです。必要項目の入力を終えて最終確認のページに辿り着くと、

「私はこの申請フォームに記載された全ての情報に虚偽がないと誓います。もし虚偽が含まれていた場合、申請の却下や最悪の場合強制送還のリスクがある事も承知しています」

みたいな項目に✅マークを入れないといけないんですね。

オンラインのみで全てが完結してしまう可能性のある「今この場で電子決済」を選ぶと、万が一自分の記入内容に誤りがあった場合、それを理由に却下される恐れがあります。それに対し、「面談時に払う」を選択して必ず面談を行うというワンクッションを入れておくと、もし記載内容に誤りがあったとしても、それを「虚偽」ではなく「うっかりミス」として善意に捉えて修正してもらえる可能性が高いのです。

実際、僕の今回の就労許可の申請フォームには記載内容に一部誤りがありました(笑)

いや、わざとじゃないですよ。わざとじゃ。

でも、対面でのやりとりを挟んだ事によって、移民局の職員さんが「これ、間違いじゃないですか?」と指摘してくれて、「あ、そうです、すみません」と僕が認めた事でその場で修正してもらい、事なきを得ました。

そして3つ目は、移民局のHPのスクショを事前に取っておく、という事です。これは2つ目とは逆に、移民局の職員さんが何かミスをした時にそれを即指摘して修正できるようにするためです。

今回の僕の場合、面談の最中に本来ならば提出する必要のなかった書類の提出も求められたので、すかさず事前に用意してあったスクショを見せて、

「いや、でも移民局の公式HPのこのページのこの項目のこの文言によれば、僕が提出しなければいけない書類はこれとこれとこれだけで、今おっしゃられた書類はそれに該当しないはずです」

と根拠も明示しながら反論しました。すると、その職員さんは

「同僚に確認を取ってきますね」

と席を立ち、確認の結果、僕の言い分の方が正しかった事が判明しました。

このように移民局の職員も人間ですしミスをする事がありますので、自分がミスをしてしまった時や相手がミスをしてしまった時の両方に備えるために2つ目と3つ目の対策が重要なわけですね。


就労許可が下りなかった時のための別プラン探し

ここまでで就労許可の申請手続きは完了していますが、ただボーっと結果を待っているだけでは芸がありません。この間にもできることは準備しておきます。

僕の場合、学生としての在留許可の期限が切れるのが2021年8月14日で、移民局に面談に行ったのが2021年7月7日でした。なので、就労許可の申請がもし却下されるとしたら、次の2パターンで考える事になります。

1:2021年8月14日までに申請却下の通知が来た場合
2:2021年8月14日よりも後に申請却下の通知が来た場合

それぞれのパターンで、次の手を打つまでにフィンランドに合法的に残っていられる期間はどれだけかを計算する必要がありますし、申請が却下されたらされたですぐに諦めて帰国するのではなく、合法的に粘れる手段はないかを早いうちにリサーチしておきます。

例えば、

「もし8月14日よりも前に却下通知が来たら、まだ学生としての滞在期間は残っているので、それが切れる前に『大学を卒業した学生の就活のための在留許可延長』を申請できないか?」

みたいなプランは候補の1つとして考えていました。

そして、そういった事を相談できそうな移民弁護士を探すのにも取り掛かっていました。

ただ、僕の場合はこういうリサーチをしている間に「あなたの就労許可の申請が無事受理されました」という通知が来まして、これ以上調べる必要がなくなってリサーチを中断したので、上記の手段が有効かどうかはわかりません。

ここまでの僕の説明を聞いて、

「そこまでやらなくても……」

って思ったそこのあなた、甘いっスよ。

ここで、僕のお気に入りのキャラのお気に入りのセリフを紹介しましょう。

画像元:少年ジャンプ・久保帯人『BLEACH』第73巻 (45 – 46ページ)

僕の場合は別に文字通り死ぬわけではないですが、それでも人生かかってます。人生を変えるためにわざわざ日本からはるばるフィンランドにまで来たというのに、一番大事な所で「やろうと思えばやれる準備をわざわざ省略する」なんて選択肢は僕には考えられないわけですね。

まぁとりあえず、在留カードが無事に届いて良かった良かった!