オールイングリッシュって意味あるのか?

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前回の記事で「語学を独学でできる人とできない人の違い」について書き、次の記事からは「独学シリーズ」を本格的にスタートさせようかと思ったのですが、その前に思い出した事があったので、まずはそれを先に書いちゃおうかなと思います。

前の記事の何を書いている時に何を思い出したのかというと、

「今の力では50kgのバーベルまでしか挙げられない子にいきなり100kgを挙げろと言ったってできるわけがない」

の概念を書いていた時に

「英語教育のオールイングリッシュって意味あんのだろうか」

という事を思い出しました。


オールイングリッシュとは?

オールイングリッシュとは、文部科学省が日本の学校の英語教員に出してきた通達で、文字通り「英語の授業は原則英語で行いなさい」、つまり「授業中は原則英語しか喋るな」というものです。これは僕が高校で英語科の教員デビューをしたのとちょうど同じ年である2013年度に始まりました。それまでは「日本語で英語を教えていた」のですが、「英語で英語を学ぶ」事によってより高い学習効果をもたらそうというのが狙いらしいです。

オールイングリッシュのようなやり方は、英語圏の語学学校などではもちろん2013年度よりもっと前から行われてきました。海外ではオールイングリッシュよりもEnglish only policyと呼ばれており、授業中に限らず語学学校の建物の中では授業と授業の間の休憩時間でも英語以外の言語は喋ってはいけないという「校則」です。

English only policyが厳しめの語学学校では、英語以外の言語を喋っている現場が見つかったら、自動車の「スピード違反」や「駐車違反」のように取り締まられるそうです。「現行犯逮捕」ってやつですねw

「取り締まり」をする以上は罰則があり、それが「何回目の違反」であるかによって罰の重さも変わります。1回目だったら口頭での厳重注意、2回目だったら反省文を書かされる、〇〇回目までいっちゃうと厳しい学校では退学処分…なんて所もあるそうです。僕自身はオーストラリアでワーキングホリデーをやっていた時は語学学校には全く通っていないので直接は知りませんが、オーストラリアで知り合った日本人が以前語学学校に通っていて、そのような証言をしてくれました。

一般的にはこのようなEnglish only policyが厳しければ厳しいほどいいみたいに信じられてるフシがあるような気がするのですが、僕は一概にこのやり方がいいようには思えないのですね。

アラビア語のレッスンを受けて思った事

僕は以前、少しだけオンラインでアラビア語のレッスンを受けた事があります。何のためにわざわざアラビア語をやってみたのかというと、それは「全くの初心者の気持ち」を思い出して理解するためです。

僕は当時無料で英会話のスカイプレッスンを知人友人相手にやっていたのですが、自分自身は今となっては英語に関してはそれほど不自由を感じなくなってしまい、英語初心者の気持ちを忘れてしまっていたので、初心者の立場に立って授業をするためにはもう1度初心者の気持ちを生で体感して思い出す必要があると思ったのです。

で、やるからには英語初心者の日本人以上に

ワカラン…… _| ̄|○

という体感をしようと思いました。文法や漢字など、日本語と重なる部分のある韓国語や中国語や、既に喋れる英語とルーツが同じなドイツ語などではなく、文法も単語も発音も文字の読み書きも、「こんにちは」や「ありがとう」の言い方すらも知らない、正真正銘「何も知らない言語」をやってみようと思い、その結果アラビア語をやるという結論に至りました。

「何も知らない初心者に先生がどうやってアラビア語を教えるのか」を見るために、自主的な予習や復習は一切しませんでした。僕の独学理論を使って自分で勉強できなくもないですが、それを使ってしまうとどこまでが自分の自主勉強のおかげで、どこからが先生の指導力のおかげなのかがわからなくなるからです。

アラビア語の先生と僕が喋れる共通の言語は英語だったので、授業は英語で行われました。先生の説明をよく聞き、指示通りに課題をこなしていると、レッスンの終わりごろには

「私の名前は〇〇です」
「私は〇〇出身です」
「彼はどこの国出身ですか?」

などの簡単な文を、主語を「私」「あなた」「彼」「彼女」「あなたたち」「彼ら」などと入れ替えたり、出身の「国」の部分を他のいろんな国名に入れ替えて使えるようになりました。(復習を全くやっていないのでレッスンが終わってしばらくすると忘れてしまいましたがw)

レッスンを終えて、僕は2つの事を思いました。

1つ目は、「この先生、教えるの上手だったな」であり、
2つ目は、「でもこれ、もし最初から最後まで全部アラビア語だったら絶対無理だったな」です。

フィンランド語ぶっ通しレッスン

僕がこのアラビア語のレッスンを受けたのはitalkiという語学サイトなのですが、このサイトでフィンランド語のレッスンも試した事があります。これ以前にフィンランド語は独学である程度勉強してあったので、先生との会話は60分フィンランド語で通してできました。

そしてこの先生との会話でちょっと驚いたのが、

「レッスンの時間の最初から最後までフィンランド語で喋り続けるのは、僕がこれまで受け持っている生徒の中では君を含めて2人だけだ」

と言われた時でした。もう1人は結婚を機にフィンランドに移住してきた女性で(たしかロシア人だったかな)、日常会話は一応できるけどやっぱり練習の機会がもっと欲しいからこのオンラインレッスンを受けている人なのだそうです。

それ以外の生徒に関しては基本的には「英語でフィンランド語を説明する」というスタイルを取っているそうです。フィンランド語のみで会話を続けるだけの地力がまだ身についていない生徒にフィンランド語だけで会話をしようとしても、何もわからずに時間が過ぎていくだけで学習効果が期待できないからだそうです。

このようにアラビア語やフィンランド語のレッスンの例を見ても、最初からその言語のみで勉強するのが必ずしもいいとは言えないみたいです。

English only policyが成功する例その1:既に中級以上のレベルに達している

ではEnglish only!みたいなやり方はどんな時に効果があるのかというと、やはり大事なのは学習中の言語以外で喋らなくても大丈夫なぐらいの地力が既に身についている事でしょう。これは前回の記事

でも述べた、

「既に95kgのバーベルを挙げられる人だからこそ100kgを挙げるためのトレーニングが意味をなす」
「今の時点で50kgしか挙がらないのなら、いきなり100kgを目指すのは無理」

という考え方です。

English only policyが成功する例その2:外国人力士の日本語みたいにやる

ただ、正真正銘徹底的に教えられるのであれば、初心者をいきなりその言語のみの環境に放り込むのもありな場合もあります。

良い例が大相撲の外国人力士です。彼らは日本のプロ野球の助っ人外国人やサッカー日本代表の外国人監督みたいに通訳を通さなくても、流暢な日本語を使いこなしてインタビューに答えられる人ばかりですが、彼らはほぼ全員来日時点では日本語を全く喋れない人たちでした。

彼らは来日して相撲部屋に入ると、相撲の稽古と並行して文字通り24時間365日徹底的に日本語を体にしみ込ませる日々を送るのだそうです。親方や兄弟子が手取り足取りやりながら日本語を教えますし、相撲部屋には女将さんも住み込みで力士たちをサポートしているので、女将さんがお母さん替わりになり、まるで小さい子に日本語を教えるように付きっ切りで根気強く教えてくれるのだそうです。

このような言語習得の仕方はLanguage immersion(日本語ではイマージョン・プログラム)と呼ばれています。「言語にどっぷり浸かる」という意味です。

とはいえ、日本人の兄弟子が外国人の弟弟子にわざと間違った日本語を教えて、その結果外国人力士が失礼な日本語を使って怒られるみたいな悪戯・トバッチリもけっこうあるらしいので、外国人力士にとっては決して楽に日本語が覚えられる環境でもないのですがw

English only policyが成功する例その3:植民地支配みたいにやる

「語学習得ができたかできていないか」のみの観点で語るとしたら、「植民地支配」も「語学習得の成功例」と呼ぶ事ができるかもしれません。

みなさんもご存知の通り英語は世界で最もよく使われる言語ですが、元はといえば英語を喋っていたのはイギリスぐらいなモンでした。「国(イギリス)の言」と書いて英語ですもんね。

それがなぜこんなにも世界的に広まったのかといえば、大英帝国の時代にイギリスが世界中のいろんな国々を植民地支配して荒らしまわったからです。そうでなきゃ、イギリスからあんなにも地理的に離れた

・ケニア
・オーストラリア

などで英語喋ってるなんておかしいでしょう。他にもアジアでもインドとかフィリピン(その他いろいろ)でも英語喋りますね。フィリピンで英語が話されるのはイギリスではなくアメリカの植民地支配の影響ですが、そのアメリカだって元々は先住民たちが住んでたし英語圏でもなかったのに、後からイギリスから来た連中がそれを蹴散らして勝手に英語圏の国にしちゃったわけです。(そして後にアフリカから数え切れんほどの黒人を誘拐すると)

植民地支配によって勢力が拡大した言語は英語だけではありません。アフリカにフランス語圏があるのはフランスが侵略しまくったからであり、中南米がスペイン語圏の国ばかりなのもスペインがそっちの方まで攻め込んできたからです。

「70年以上戦争をしていない」日本だって、世界大戦でアメリカにフルボッコにやられて足腰立たなくなるまでは主にアジアの国々で植民地支配をやってたわけで、特に中国や韓国や台湾の戦争を体験した年代の人達は植民地支配の影響で日本語ペラペラです。

日本の倍以上の「180年間戦争をしていない」スウェーデンですら、フィンランドを植民地支配していた時期がありました。だからこそ今フィンランドにはスウェーデン語圏が存在しているのですね。

植民地支配の影響で支配国の言語を喋れるようになった人たちは、「ちょっと喋れる」とかではなく「ペラペラ」のレベルです。「言語習得のみ」を論点にし、支配者側のみの勝手な都合でものを言えば、植民地支配は「かなり効率のよい言語学習方法」という事になります。

もちろん、実際には植民地支配による高レベルでの言語習得の裏には「支配された側の人々の人権が踏みにじられている」という悲しい側面があるのもまた現実であり、植民地支配などという方法で言語圏の拡大ができたのは、当時人権に対する国際社会の意識が

「は?ジンケンって何?ソレ、おいしいの?」

とかいう程度のレベルだったからです。昔と比べ人権保護が進んでいる現代では、いかに習得レベルが高くなるといえど、モラル的に見て問題外な手法であると言えるでしょう。

まとめ

以上、English only!みたいなポリシーがどんな時にどれぐらい効果があるのかを見てみましたが、先述の「成功例」の3つを見てみても、「植民地支配」は論外だから最初から除外だし、「外国人力士の日本語」みたいな環境もそう簡単に作れるものでもないでしょうから、現実的に言えば多くのケースでは

「既に中級以上のレベルに達している」

学習者のみを対象とするのが賢明でしょうね。

もし初心者レベルの人にもやるのだとしたら、中途半端ではダメで、相撲部屋の日本語並みに徹底的にやらないと効果は薄いと思います。

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