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ここ最近、お笑い芸人の出川さんの人気が凄いですね。かつては
「抱かれたくない男」
「砂に埋めたい男」(←それにしてもなんてかわいそうなランキング…^^;)
などの「不人気」系のランキングで1位または上位ランクインの常連だったのに、今となってはそのイメージは完全に逆転。
「友達になりたい芸能人」
のランキングで1位に輝くなど、瞬く間に人気者のステータスへと昇り詰めました。
その人気急上昇の原動力となったと言われているのが、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ』の
「出川哲郎はじめてのおつかい」
という、出川さんが外国で英語だけを使って与えられたミッションをこなすコーナーです。
出川さんは英語はほとんど喋れず、毎回メチャクチャな英語で現地人たちに話しかけたり、現地人の英語をトンデモない聞き間違いで勘違いしたりするので、それが神がかった編集技術(主に挿絵)と見事に組み合わさって視聴者の笑いを取るのに一役買っているのですが、その一方で、最終的にはなんだかんだでいつもミッションをクリアしているので、
「あの英語力でもやっていけるんだ」
「あのコミュニケーション力、すごい」
と、感心する視聴者も多数います。
出川さんの喋る英語は「出川イングリッシュ」と呼ばれ、
「出川イングリッシュに学ぼう」
とばかりに中学校の英語の授業でも取り上げられているほどです。
そして、
「出川イングリッシュ 通じる」
とかのキーワードでGoogle検索すると、既に「なぜ出川イングリッシュは通じるのか」を論じたブログ記事がわんさか出てくるのですが、僕もここで分析記事を書こうと思います。というのも、彼の英語が通じる理由には、
「語学でスピーキングを上達させる技術」
のうちの1つが含まれているからです。
他のブログ記事による分析
僕がこのブログ記事を書く前の時点で既にネット上にあがっているブログ記事でよく目にする分析は、
「出川さんは相手の目を見て喋っているから英語が通じるのだ」
「喋る時に遠慮していないのがいい」
「大きな声で喋っている」
「めげない、諦めない事」
などが要因として挙げられていますが、僕の意見では、これらは理由としてはちょっと弱いと思います。
例えば、電話とかみたいに相手の目を一切見ない会話でも、話す内容さえしっかりしていれば会話は成立するのだから、
「相手の目を見て喋れば伝わる」
VS
「相手の目を見ずに喋ると伝わらない」
という単純な二元論は必ずしも成り立ちません。
また、「遠慮しない」、「大きな声で喋る」、「めげずに話しかけ続ける」に関しても、それでうまく行く事もあれば、逆にうっとうしがられる事だってあるのです。程度の違いこそあれど、これは海外でも基本的には同じです。
実際、出川さんは毎回
「相手の目を見て」
「遠慮せずに」
「大きな声で」
「めげずに話しかけて」
いますが、うまく行っている時とそうでない時があります。
では、うまく行っている時とそうでない時は何が一番違うのか?うまく行っている場合、あれだけボキャブラリーに乏しい出川さんの英語がなぜ通じるのか?僕の考えでは、その一番決定的な要因は、出川さんが無意識のうちに使っているであろう、
「パラフレーズ」
の技術です。
言い換えの技術、パラフレーズ
パラフレーズとは何か?日本語では、
「言い換えの技術」
と表現するのが適切かと思われます。
例えば、下のリンクの動画(25:42~)では、出川さんのミッションはサンフランシスコの夜景の名所、「宝島」がどこにあるのかを道行く人に英語で質問して探し当てるというものなのですが、出川さんは英語で「宝」を意味する”treasure”という単語を知らないので、このように言い換えています。
「ダイヤモンドアイランド」
「メニメニマネーアイランド」
特に2つ目がうまいですね。
「メニメニマネー」という言い方によって、
「お金がたくさんある」→「お宝」
というイメージを作り出しています。文法的には、Moneyは不可算名詞なのでManyという単語と一緒には使えないのですが、この場合は文章全体の意味を壊すほどの深刻な文法ミスではないので、「自分の言いたい事を伝える」という目的を果たす分には問題はありません。(もっとも、Treasure Island(トレジャーアイランド)という返答を「社長アイランド」と聞き間違えたりしているのでそこから先も一苦労なのですが^^;)
他にも、「植物園」を意味する
Botanical Garden
を
「メニメニフラワーパーク」
と言ったりするなどして、その都度その都度ボキャブラリー不足を「言い換えの技術」によって補っているのです。僕の見た限りでは、出川さんの英語が通じるか通じないかは、この「言い換え」の部分がうまく行っているかどうかが最も大きなウエイトを占めているようです。(上の動画は伝わらなかった時の面白シーンを集めてたものなのでこの時点では伝わっていないですが、最終的には言いたい事が伝わっています。)
そして英語ではこの「言い換えの技術」をパラフレーズ(paraphrase)と呼び、TEFL(Teaching English as a Foreign Language)やTESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)などの英語教授法の理論においては、特にスピーキングの分野で
「英語学習者に身に着けさせるべき重要な技術」
の1つとして位置づけられています。
「門限」って英語で何て言う?
さてみなさん、ここで質問です。
「門限は午後10時です」
と英語で言わなければいけない状況になったとしたら、なんて言いますか?
「門限」っていう英単語、知ってますか?
門限は英語でcurfewなのですが、「門限は午後10です」を英語で言うためには、実は必ずしもcurfewという単語を知っている必要はないのです。
門限というのは、
「決められた時間までに所定の位置に戻ってこなければいけない」
という意味です。英語で「門限」という単語を知らなかったり、一時的に忘れて出てこなかったとしても、「門限」という単語が何を意味するのかを考え、それを知っている範囲の英単語を駆使して言い表せばいいのです。例えばこんな感じです。
You have to come back here by 10 pm.
(10時までにここに戻って来なければいけません)←(つまり「門限は午後10時です」)
文を細かく分解すると、それぞれ
have to~ → 「~しなければいけない」
come back here → 「ここに戻ってくる」
by 10 pm → 「午後10時までに」
という意味になります。どれも中学校の英語で習う範囲の文法や単語ですから、特別難しい文章ではないですね。
まとめ
英語に限らずどの言語でも、スピーキングを伸ばすためにはボキャブラリーの強化は避けては通れません。2000単語しか知らないより、1万単語知っていた方が有利なのは言うまでもないからです。
しかしその一方で、語学力は単にどれだけの数の単語を暗記しているかだけで測れるような単純なものでもありません。
・5000単語覚えているがパラフレーズ(言い換え)の技術がないAさん
・2000単語しか覚えていないがパラフレーズ(言い換え)が上手なBさん
の2人であれば、ボキャブラリーの少ないBさんの方が喋るのが上手である可能性は十分にあるのです。
語学においてパラフレーズはこれだけ重要な技術であるのにもかかわらず、学校の英語の授業ではこういった「言い換え」の練習をする機会って全くといいほど与えられていないと思うのですが、みなさん、どうでしょうか?「うちの学校ではパラフレーズの練習やってたよ」っていう人、いますかね?ひたすら単語の暗記をやらされた人の方が圧倒的に多いんじゃないですかね?
これは英検やTOEICなどの英語のテストにも同じ事が言えます。特に英検一級のリーディングの部分なんて、「文章を読み取る能力」というよりは「普段全く使わないようなマニアックな英単語をどれだけ知っているか」の勝負であり、「実践で英語が使いこなせているかどうかを見る」という観点で見れば、だいぶ方向性がズレているように思えます。
先にも既に述べましたが、ボキャブラリーの増強はやらなくてもいいというわけではありません。以前の記事で
「文法の理解と会話の練習は両輪である」
と述べたように、
スピーキング能力の向上においても
「ボキャブラリーの増強」
「今自分が知っている文法やボキャブラリーの範囲内で言いたい事をなんとか表現する練習」
の2つの両方に取り組む事が求められるのであり、どちらか片方だけをやっていればいいという話ではないのです。
要はバランスですね。おそらく多くの人はパラフレーズの練習はほとんどやっていないでしょうから、
「単語の暗記」
「言い換えの練習」
の2つで言えば、「単語の暗記」ばかりをやっていたら、勉強量の割り当てのバランスが悪いです。その偏ったバランスを整えるためにも、パラフレーズ(言い換え)の技術にも注目してみるといいのではないかな、と僕は思います。
※※今回の記事では主にパラフレーズの事のみを取り上げましたが、もっと幅広く語学のやり方を学ぶ『語学独学講座』というものもやっています。興味のある方はコチラからどうぞ※※
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