英語で重要なのは4技能だけではない?32のカテゴリーを制覇せよ!

こうしてブログを書いてると、ありがたい事にたまにコメントをいただけます(ブログにコメント欄は設けてないのですが、メールをもらえたり、Facebookで既につながっている人からコメントをもらえたり)。その中には僕の語学勉強法に興味をお持ちの方もいらっしゃり、今となっては実際にスカイプで「独学での語学のやり方伝授」をテーマにレッスンをしている人もいます。

今僕のレッスンを受けている人もいきなりレッスンが始まったわけではなく、まずはメールのやり取りを何件かやっているんですね。で、その中に「これ、ブログでもシェアした方がいいかも」と思った内容のものがあったので、今日はその事について書きます。


4技能では不十分?32のカテゴリーに分けよ

僕は以前から語学に関しては4技能(読む、聞く、書く、話す)のバランスは非常に重要であると考えていましたが、上記のスカイプでのレッスンを始めるちょっと前ぐらいの時期から、大人になってから外国語を勉強するのであれば4技能のバランスを考えるだけでは不十分なのではないかと考えるようになりました。

それ以降の僕の考え方では、語学学習の活動は32のカテゴリーに分ける事ができます。

ベースとなるのは

「読む」(Reading)
「聞く」(Listening)
「書く」(Writing)
「話す」(Speaking)

の4技能なのですが、それにいくつかの要素を掛け合わせるのです。結論から言うと、

4×2×2×2

で合計32カテゴリーになるのですが、なぜ3回も2をかけるのか、それをこれから説明していきます。

補助ありVS補助なし

まず、「読む」にしても「話す」にしても何にしても、それが「補助あり」なのか「補助なし」なのかによって変わってきます。

この「補助あり」や「補助なし」とは一体何なのか?

ここでいう「補助あり」とは、ネイティブスピーカーや上級者がその言語を使う時には必要ないような補助を使っている状態の事をいいます。

例えば、

・リーディングの時、辞書を使っていちいちわからない単語を調べながら読む
・英語の動画を見るにしても英語字幕をつけて、わからない単語を調べながら見る
・英会話で相手に特にゆっくりはっきり喋ってもらったり、わからなかった部分を言い換えて説明してもらったりなどの、ノンネイティブ用の配慮をしてもらう
・ライティングをする時にいきなり書くのではなく、箇条書きのメモで考えを整理したり、単語や言い回しや文法項目などを調べながら書く
・スピーキングをする前に、何を喋るのか事前にメモをしたり、既にできあがった文章を暗記しておくなどの準備をしておく

などが「補助あり」にあたり、

逆に

・辞書を引かずに読む
・字幕なしで動画を見る
・何かを書こうと思ったらその場でスラスラっと書く(普通の友人同士のチャットなど)
・その場で思いついた事をそのまま喋る(普通の友人同士の会話など)

などを「補助なし」と分類します。

語学学習の活動は「補助あり」か「補助なし」のどちらかに分類でき、学習者の現在のレベルに応じて「補助あり」でなければできないものもあれば、「補助なし」でもできるものもあります。従って、自分の今のレベルに応じて「補助あり」の学習と「補助なし」の学習の割合は変わりますし、それらをどのように組み合わせるのかも変わってきます。

おそらく語学学習で上手くいっていない人の多くは、どんな学習活動を行うかを決める際に、「補助あり」と「補助なし」の組み合わせが上手くできていないのだと思います。

例えば、スピーキングがまだ上手でないうちは、事前に何を喋るかを決め、喋りたい事を予め頭の中で整理しておくなどの「事前準備」(つまり「補助あり」)が必要です。それをやらずに何も考えずいきなりその場で喋ろうとするとなかなか言葉が出てきません。日本語の面接でだって、慣れないうちは準備してないと上手く質問に答えられない事が少なからずあるのだから、外国語のスピーキングだったら、上手でないうちは準備しなければ上手くできないのはなおさらなはずですよね。

「補助あり」と「補助なし」の原則は、

・今の自分には難しい事をやるのであれば、難易度を下げるための「補助」を入れる
・「補助なし」でやるのであれば、「補助なし」でもできるぐらいのちょうどいいレベルの課題を選ぶ

の2つです。

このどちらの条件も満たさないようであれば、「現在の自分のレベルに合っていない勉強」になり、費やした勉強時間の割には効果があまり出ないという事になる可能性があるので、注意が必要です。

フォーマルVSインフォーマル

どんな言語にも、程度の違いはあれど「丁寧な表現」や「くだけた表現」があります。

「丁寧な表現」は、英語で言えば

・教科書に出てくる英語
・ニュースでアナウンサーが喋る英語
・大学の先生が授業で喋る英語
・新聞で書かれている英語

などがそうで、

「くだけた表現」は、

・ネイティブの友人同士の会話
・YouTubeのコメント欄
・漫画のキャラのセリフ

など、いわゆるスラング交じりで必ずしも教科書通りの文法に従っていないものです。

基本的には、フォーマルな英語を伸ばしたければフォーマルな英語にたくさん触れる必要がありますし、インフォーマルな英語を伸ばしたければインフォーマルな英語にたくさん触れる必要があります。

たまに日本に住んでいる外国人の日本語で、

「日本語学校の先生の日本語は100%わかるのに、バーに行ったら日本語が一言もわからなかった」
「日本語はバーでいろんな人とたくさん話して覚えたから会話に自信はあったけど、ある日携帯電話の契約を1人でしようと思ったら店員さんの説明が全くわからなかった」

といった2パターンの悩みを耳にしますが、これは「フォーマルな日本語」と「インフォーマルな日本語」のどちらか片方ばかりに触れていたために起こる現象です。

英語やその他ヨーロッパ系の言語は日本語に比べたら「フォーマル」と「インフォーマル」の差は小さめですが、それでもやはり差がないわけではありません。

どちらか片方のタイプにしか触れていない場合は、場合によってはその不足している方のタイプの言葉に触れる機会を意図的に増やすとよいかもしれません。

一般的VS専門的

言語の理解度は、トピックが一般的であるか専門的であるかによっても左右されます。基本的には一般的な内容よりも専門的な内容の方が難しいので、言語を学習中の間(それも特に上級になる前まで)はなるべく一般的なトピックを通して勉強するとよいと思います。

「専門的」なトピックは、「インフォーマル」な表現と組み合わさると理解不能なレベルになってしまう事もあります。

例えば次のような日本語は、専門的な知識がない限りは日本語ネイティブである日本人でも何を言っているのかさっぱりでしょう。

A:「おつかれー、どうだった?」
B:「いやー、朝から散々だわ。何で朝一のレーンなのに既にこんなに手前枯れてんのか。既に1G目からけっこうインサイド入らないとポケットに届かなかったね。でも奥はキレてないし外はズルズルだし、ハイスコレーンを真逆にした感じ。内にミスると裏までいっちゃうし、ちょっとでも出しすぎるとそのまま抜けてサヨナラ。まともにポケットに入らんし、たまに入っても今度は入りが甘いから10ピンが飛ばない。これ、はっきり言ってプラス打つのは無理やわ」
A:「投げるラインないじゃん、それ。今回は右にはキツイな。逆に左の連中には相当幅があるように見えたんだけどねぇ。俺と同箱の奴だってセミパー2回出して800超えてたし」
B:「なんでそんなに打てるんか理解不能だな。」
A:「俺もそいつに聞いてみたんだけど、『5枚目ひたすら真っ直ぐ』とかいう返事が返ってきただけだった」
B:「それで打てるんならこっちも苦労せんわな。不公平だ不公平」

さて、いかがでしょうか?何が何だかさっぱりでしょう?それもそのはず。これはボウリングの公式試合でよく聞く会話なのですが、専門用語がインフォーマルな形でどんどん出てきていますので、競技としてボウリングをやっていた人でなければわからないと思います。

ボウリングのレーンにはオイルが塗られており、レーン上のオイルの状態に応じてピンの狙い方を変える「ライン取り」というのを行うのが競技ボウリングにおいては常識となっているのですが、この「ライン取り」の考え方を理解していなければ上の会話の専門用語も理解できません。あと、ボウリングの公式試合の1日がどんな流れで進むのかも知らないと、「ライン取り」以外の部分の話もイメージしにくいでしょうね。

ここで言いたいのは、上記の日本語のように「語学力以外のもの」が原因で話の内容がわからない事だってある、という事です。

従って、もし専門的な内容のものを理解しようとする場合、大事なのは語学力を磨く事よりも専門知識を仕入れる事だったりします。

これは逆に言えば、専門的なトピックに取り組む場合は、その専門知識さえ仕入れてしまえば、語学力自体をそれほど高めなくても対応できる可能性が十分にあるという事でもあります。

例えば、以前書いた記事

で、僕は100点満点中95点という高得点でこの授業の単位を取得したというエピソードを紹介しました。授業もテストもスウェーデン語で行われたのにこんなに成績が良かったのは、別に僕の語学力が特別優れていたからではありません。僕は一応スウェーデン語で大学の授業を受けるためのスウェーデン語力のテストはクリアしましたが、現地のネイティブたちとはまだまだスウェーデン語力で差があります。しかし、僕よりスウェーデン語力で明らかに上回るはずのネイティブの人達の中には落第ギリギリの点数しか取れなかった人たちもいます。

なぜスウェーデン語ペラペラの彼らよりもスウェーデン語のノンネイティブでしかもリスニングが苦手な僕の方がスウェーデン語で行われた授業をよく理解していたのかというと、僕の方が彼らよりも授業の内容に関する知識を多く持っていたからです。

この授業はC言語というプログラミング言語に関するもので、僕はC言語はオーストラリアのワーホリ時代に既に自分で勉強していたため、入門レベルであればC言語の仕組みは既に理解していたのです。それに対し、落第ギリギリだった現地のスウェーデン語ネイティブの学生何人かはC言語に関する知識が一切ない状態で授業を聞いていました。

このような事もあるので、学習中の言語(英語なら英語)で中級以上のレベルに来た人は、自分が今取り組んでいるトピックは一般的なのか専門的なのかも意識してみるとよいかもしれません。

まとめ

さて、ここまで紹介してきたように、語学の活動は

「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能に、

・「補助あり」か「補助なし」かの2種類
・「フォーマル」か「インフォーマル」かの2種類
・「一般的」か「専門的」かの2種類

の要素も掛け合わせるので、

4×2×2×2 = 32

で、32のカテゴリーが存在する事になります。

従って、例えばリスニング1つをとっても、それが「補助ありでフォーマルで一般的なトピック」のリスニングだったり、「補助なしでインフォーマルで専門的なトピック」のリスニングだったりと細かく枝分かれするので、どのタイプのリスニングをやるのがいいのかはその人の現在のレベルによって変わってきます。

一般的には、語学力が低いほど「補助あり」で「フォーマル」で「一般的なトピック」のものから始めるとよく、語学力が高くなるほど「補助なし」で「インフォーマル」で「専門的なトピック」にも対応できるようになる傾向があると思いますが、場合によってはそれほど語学力が高くない段階でも「インフォーマル」や「専門的」な話をしても大丈夫なケースももちろんあります。

大事なのは、

・自分の今の語学力
・教材や課題のレベル
・自分が既に持っている知識が背景知識として役に立つかどうか

の3つのバランスですね。

これらを考慮に入れた上で32のカテゴリーの中から学習活動を選ぶようにすると、より自分に合った課題になると思います。