フィンランドの労働時間が日本より圧倒的に短い理由

先日の記事

でも書いたように、僕は2019年6月から8月末までフィンランドのIT企業に有給インターン生として勤務しています。北欧と日本の会社の違いはいろいろありますが、今回の記事では特に

労働時間

の事について書こうと思います。

※追記※
2021年7月末にフィンランド移民局から正式に就労許可が下り、これにより「単なる学生」から「労働者」としての北欧移住を成功させました✨
そこに辿り着くまでの道のりをまとめた記事もありますので、興味のある方はこちらもどうぞ


日本より圧倒的に短いフィンランドの労働時間

日本で高校の教員、民間企業の派遣社員として働いた経験のある僕が、まずフィンランドの会社の中に実際に入って感じたのは、

退社時間早えー!((( ゚Д゚)))

です。

今の所、僕の一番遅かった退社時間は16時45分。

この時間帯でも僕が退社するころには2人ぐらいしかオフィスに残っていません。

高校で教員をやっていた時は僕自身も含めてサービス残業が月100時間超えるなんて人はゴロゴロいましたし、残業の少ない派遣社員をやっていた時でも、定時上がりでも18時退社でした。

このように、一般的にフィンランドの会社の方が日本の会社よりも明らかに早く帰れます。

そしてそこには、大きく分けて

・労働文化
・就業規則

の2つの背景があるのですが、それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。

まずは労働文化から。


残業を良しとしない文化

基本的に、フィンランドの会社には

「遅くまで会社に残っているのが偉い」
「先輩や上司がまだ残っているから先に帰りにくい」

という考え方そのものが存在しません。上下関係も非常に緩く、

「下っ端は誰よりも早く到着し、誰よりも遅くまで残る」

みたいな、職場への到着時間と職場から帰る時間を上下関係と結びつける事もありません。

あくまで残業というのは、それをしなければ仕事が期限までに終わらない時に”仕方なく”やるものであり、基本的には”やるべきでないもの”とみなされています。本当に必要な時しかやらないので、期限がそれほど近づいていない仕事であれば、終わっていなくても定時になったらそこで切り上げて家に帰ります。


飲み会に時間を使わない

また、仕事が終わってから飲み会が開催される、という事もありません。

日本の職場だと、多くの場合、ブラックな職場だけでなくホワイト企業でもそれなりの頻度で飲み会があります。年度が変わると歓送迎会はあるし、異動があっただけでもやはり歓送迎会。それ以外にも何かにつけて飲み会が開かれ、多い所では「年何回」ではなく「月何回」、ひどい所だと「週何回」単位で飲み会に付き合わされる所もあるのだとか。

飲み会自体は仕事ではなくても、会社関連の人間と一緒に勤務時間の後も一緒に何時間も過ごすのですから、よっぽど仲の良い同僚とでもない限り、

「仕事で拘束されているも同然」

という事になります。

ちなみに、僕がこの記事執筆時点で有給インターン生として所属していたIT企業には6月の半ば頃に

Summer Day

というものがあり、事実上の飲み会となっているのですが、これは

日中の勤務時間を丸ごと使ってやります。

その日1日は会社の業務を丸ごとオフにして、貸し切りのバスにみんなで乗って遠出して、そこで親睦会&飲み会を開くわけです。

仕事を朝から夕方までこなし、その後でさらに飲み会をやるという発想は彼らにはありません。

このように、労働文化の違いだけでもこんなに「時間外労働」が発生してしまうのですが、日本とフィンランドの職場にはもう1つの大きな違いがあります。

それは「定時退社に関する就業規則」です。


同じ「残業ゼロ」でもフィンランドの方が短時間勤務な理由

さてみなさん、ここで質問です。

「定時上がり」

というと、何時間勤務の事だと思いますか?

日本人であれば、この問にはほぼ全員が

「8時間勤務」

と答えるでしょう。

午前9時に出社して1時間の昼休憩を挟み、午後6時に退社。

会社によっては8時~17時、または10時~19時の所もあるかもしれませんが、基本は

8時間の労働 + 1時間の休憩

で、職場にいるのは合計9時間のはずです。

でも、フィンランドでは違います。

こちらでは、定時上がりとは

“7時間半勤務”

の事を言います。

そして、昼休憩は1時間ではなく30分。つまり、1日の拘束時間は

7時間半の労働 + 30分の休憩

で、職場にいるのは合計8時間なのです。

もうお気づきですよね?日本とフィンランドの職場では、たとえ毎日定時上がりで「残業ゼロ」だったとしても、単純計算で

1日で1時間、
1か月で20時間、
1年で240時間

労働時間に開きがあるのです。

しかも、これはあくまで日本の会社が毎日きっかり8時間労働までで切り上げている場合の計算です。

実際には昼休みにも仕事をしている人は少なくないですし、悪質な会社だと

「9時間勤務+1時間の休憩を『定時』と言い張っている」

所もあります。

逆にフィンランドでは(少なくとも僕が現在いる会社では)、休憩時間30分といってもそこまで厳密に30分で休憩終わり、という感じではなさそうです。実際、僕の周りを見てみると、1時間とまではいかなくても、40~45分ぐらいは昼休憩に費やしてるんじゃないかと思われる人が何人もいます。なので、フィンランドの勤務時間は

実際には7時間半よりさらに短い

と言えると思います。

また、一応定時は9時‐17時なのですが、早く来て早く退社するのは何の問題も無いので、

8時出社、16時退社とか、
8時半出社、16時半退社、

人によっては

7時出社、15時退社

の人もいます。


フィンランドの会社が短時間労働でも成り立つ理由

ここまでで、フィンランドの労働時間が一般的にみて日本よりも短いという事はわかりましたが、ここで気になるのが「なぜそれでも成り立つのか?」という事ではないでしょうか。

日本の労働時間が必要以上に長いのは誰もが思っている事でしょうし、勤務時間を短くできるならそれに越したことはないと思います。しかし、ただ単に

「はい、〇〇時以降は仕事禁止!」

と号令をかけるだけでは、それ単体では効果は薄いでしょう。

そんな工夫のない命令をした所で、職場での表面上の残業は減っても、家に持ち帰って残業をする「持ち帰り残業」が増えるだけだからです。

ではどうすればいいのか?そのためには、まずフィンランドの会社がなぜ短時間労働でも成り立つのかを考えてみる必要があります。


そもそも無理なスケジュールは組まない

まず第一原則として、従業員1人1人に重すぎる業務負荷をかけないようにする、という事です。

・1人に多すぎる仕事を掛け持ちさせない。
・終えるのに時間がかかりそうな仕事は、最初から締め切りに余裕を持たせる。

これと真逆の事をやらされている代表格が、日本の学校の教員という職業です。

これは僕の旧ブログ

https://ameblo.jp/sean2014/entry-12246919889.html

でも書いたのですが、教員というのは基本的に

・教科担当・担任業務
・部活動指導
・校務分掌(会社でいう部署のお仕事)

の3足のワラジを履かされます。

しかも、締め切りが異様に短いタスクが振られてくる事も日常的にあります。「この書類、明後日までにお願いしますね」とか。だったらもっと早くその書類よこせよ、そんな直前になって渡してくんな、って感じです。

そして実態を見てみると、学校の教員というのは長時間労働が常態化し、過労で倒れる人が続出しているのですね。こんなんでいい仕事ができるわけがありませんし、このような環境で働きたいだなんて普通は思わないでしょう。民間企業も、ブラックな所は基本同じ構造です。

労働時間を短くする場合、ただ「残業するな」と命令するのではなく、そもそも無駄な残業が発生しない環境作りをする事が大事なのですね。「3足のワラジ」みたいな状態が解消されない限り、無駄な残業が発生しない方がおかしいのです。


顧客の理解がある

そして職場の外の人間からの無駄なプレッシャーがない、というのも重要です。

例えば、先日僕の現在の勤務先のフィンランドのIT企業で電話対応してた人が、こんな事を言っていました。

「現在はバカンス期間中でして、申し訳ありませんがその〇〇の件に関しては即対応は難しいです。」

※フィンランドは6月から8月はバカンス期間で、1か月ほどの長期休暇を取る人が多い※

ここで大事なのは、客が理解を示し労働者に無理をさせない、という事です。

北欧では夏はバカンスを取って仕事の事は一旦忘れられるのが当たり前ですが、なぜこんな事が可能なのだと思いますか?それは社会全体がバカンス期間に生じる「多少の不便さ」を受け入れているからです。

日本では事実上、24時間365日サービスが受けられて当たり前みたいな社会になっています。これは客の立場で見ればたしかに便利なのですが、労働者側から見てみればものすごく大きな負担となります。いつでも対応できる人員を常に誰か用意しておかなければならないのですから。

労働者が休めるのは、職場のみならず顧客の理解もあってこそです。

客の立場の人間が「お客様は神様であり、おもてなしされて当然」という意識を持ち、「休むな!」というプレッシャーを労働者に与え続けていたら、北欧のような余裕のある働き方の実現は非常にキビシイでしょう。


テクノロジーを最大限活用している

これに関しては、僕はフィンランドではIT企業以外の職場に入った事がないので直接は知りませんが、少なくとも僕が今いる会社では便利なツールをよく利用しており、それが無駄な時間の排除につながっています。

例えば、従業員のメールアドレスはOutlookではなく、グーグルアカウントによるグーグルアドレスです。

これの何がいいのかというと、グーグルのアカウントを持つ事により、グーグルの他の機能もいろいろ使えるという事です。僕の今の会社はオーランド諸島とフィンランド本土の両方にオフィスがあるのですが、離れた場所にいる人との音声会議もグーグルハングアウトを使えば簡単にできます。

さらに、日々の業務連絡でメールより便利なのが、Slackというアプリです。トピックごとにスレッドを立ち上げて、特定のメンバーとコミュニケーションできるので、非常に整理された形で情報のやりとりができます。

僕が学校で教員やってた時なんか、

「各教員用に設置された『連絡箱』に連絡事項を書いた紙を入れる」

でしたからね。

とにかく連絡は紙ベースで来るから、かさばってスペースとられるわ、どの書類をどこにしまうかの仕分けでもイチイチ時間とられるわでホント無駄な労力&時間を費やすハメになってました。

パソコンのスペックもメッチャ低くて、未だにWindows XPでしたからね。僕が教員を現役でやってたのは2013年度だったので今から6年前ですが、それでもXPはないでしょー。

ものによってはWordすら入ってなくて、代わりに「一太郎」でした。

この日本の職場のテクノロジーに疎い所は、こちらのYouTuberにも指摘されてますね。(9:45から)


まとめ

はい、では今回の記事でカバーした、なぜフィンランドでは短時間労働が実現されているのか、その背景となる要素3つをもう一度挙げます。

・残業を推奨しない労働文化
・拘束時間の短い就業規則
・無駄な時間を排除してくれるテクノロジー

でしたね。

どれも個人の努力だけですぐに変えられるものではなく、今政府が声高らかに叫んでいる

「働き方改革」

も、一体どれだけ効果があるのか怪しいものです。

つまる所、日本で長時間労働を避けるには、

最初から超絶ホワイトな職場を引き当てるか(←確率低いけど)、
起業して少ない労働時間でも回せるような仕組みを作るか(←難易度高いけど)、
バイトや派遣社員に甘んじる(←給料低いけど)

ぐらいしかないですねー。

んで、この上の方法のどれもダメだという場合、どうしたらいいのか?

海外出るしかないっスね\(^o^)/

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