ネットで知り合った人に泊めてもらったトゥルク旅行記(前偏)

僕は普段フィンランドのスウェーデン語圏であるオーランド諸島に住んでいますが、つい先日フィンランド本土のトゥルクという街に旅行してきましたので、今回の記事ではその時の事を書いていこうと思います。

全部で約1万字の長文になってしまいましたので、前半後半の2部に分けます。

前半では主に今回僕を泊めてくれた現地のフィンランド人の友達について
後半では主に僕のトゥルクで過ごした日々やそこで感じた事などについて

書いていきます。

今回は前半(勉強熱心なVille君の部屋まで)だけ。

【目次】

ヘルシンキ or トゥルク?

前々から時間ができたらフィンランド本土にもちょっと旅行に行きたいなと思っていたのですが、今はまだ夏休み中ですしちょうどいい機会でした。今回旅行先の候補に挙げたのはヘルシンキとトゥルク。ヘルシンキは現在のフィンランドの首都ですが、トゥルクはヘルシンキが首都になる前に首都だった所です。トゥルク都市圏の人口は、ヘルシンキ都市圏、タンペレ都市圏に次いで3番目となっています。

僕は1人で旅行に行く時は、現地に知り合いや友達がいる所を旅行先の候補にする事が多いです。今回ヘルシンキとトゥルクを候補にしたのも、単純にヘルシンキとトゥルクに友達がいたからだったのでした。

最初はヘルシンキとトゥルクの両方に行こうかな~と思っていたのでヘルシンキとトゥルクの友達両方にFacebookでメッセージを送っていたのですが、トゥルクの友達は僕が「〇日から〇日の間あたり、予定あいてる?」と聞いたらその翌日には「空いてるよ!」と返事をくれたのに対し、ヘルシンキの方は返事こーず。

よってトゥルク決定。

となったのでした。

そして僕の最初の「予定空いてる?」のメッセージから18日後にヘルシンキの友達からも「空いてるよ~!いつ来る?」とようやく返事が来たのですが、時すでに遅し。

既にオーランド ― トゥルク間のフェリーの切符を往復で買ってしまっていたし、トゥルクでの予定も既に埋まっていたので、ヘルシンキ行きはおあずけとなったのでした。

語学サイトで知り合ったVille君

今回会う事になったのは、生まれも育ちもトゥルクのVille君。彼とはどうやって知り合ったのかというと、語学サイトがきっかけでした。この語学サイトには自分の学習中の言語でいろいろと文章を書いて投稿してそれをネイティブに添削してもらえるという機能があるのですが、ある日僕がフィンランド語でいろいろ書いて投稿したら、その文を添削してくれたのがVille君だった、というわけです。

これ以前にも僕は何度もフィンランド語で文章を投稿し、他の何人かのフィンランド人に添削をしてもらえてて、その度に「添削ありがとうございます!」とかみたいな簡単なお礼のコメントをフィンランド語で返していたのですが、Ville君には他のフィンランド人とは違う点がありました。彼のプロフィールを覗いてみると、「喋れる言語」の中に日本語があったのです。

そこでお礼のコメントを書く時に「添削ありがとうございます」だけでなく「日本語も喋れるんですね、すごい!」てな感じに、彼の日本語の事にも少し触れてみました。すると彼から「実は僕、日本に留学してた事があるんです!」とダイレクトメッセージが届き、しかもその時の彼の留学先は僕の地元だったという偶然のオマケつき。そこからメールのやり取りが何件か続き、Facebookも交換し、スカイプで喋ったりもしたのでした。

語学サイト内でのやり取りや、テレビ電話で喋ってた時も「もしトゥルクに来られる時はぜひ会いましょう!」と言ってもらえてたし、トゥルクを旅行先の候補にするならそりゃVille君に連絡でしょうという事で、今回「予定空いてる?」と聞いてみたのです。

現地の友達に泊めてもらう

今回トゥルクには3泊したのですが、ありがたい事にVille君のお宅に泊めていただける事になりました。「すんません、もし迷惑じゃなかったら泊まってもイイっすか?」と聞いてみたら「数日程度なら全然問題ないですよ!」とOKしてもらえたので、お言葉に甘える事にしたのです。

つまりネットで知り合ったがまだ直接は会った事のない友達に泊めてもらう、という事なのですが、実は僕はこういう事をするのは今回が初めてではなく、2016年にフィンランドに初めて行った時(この時はまだ留学ではなく旅行)は別のフィンランド人の友達に泊めてもらいましたし、2012年にスウェーデンに初めて行った時も現地のスウェーデン人の友達の家に泊めてもらいました。フィンランドやスウェーデンに初めて行った時も、泊めてくれたこの人たちはネットで知り合ってはいたが当時はまだ直接は会った事のなかった人でした。

こういう話を日本で日本人の友達にすると、たまに

「海外で、しかもネットで知り合っただけの人の所に泊まる?何でそんな危ない事するん?殺されるやん!!」

などのような事を言われる事があるのですが、僕はこれが「危ない事」だとは全く思いません。

まず第一に、僕が旅行で行っているのは「世界危険な都市ランキング」とかに上位ランクインしているような場所ではなく、世界でもトップレベルに治安のいい北欧です。「海外は危ない」だとかよく言われますが、そんなもんは国や地域によってピンキリですので一概に語れるものではありません。「安全だ」と言われている日本だって場所によってはヤクザとか「半グレ集団」とか、他にも変質者とか通り魔とかがいて治安の悪い場所はあるんだし、

「日本=安全」VS「海外=危険」

みたいな単純な二元論でものを語る人は、しっかりと物事を観察しておらず、日本だとか海外だとかに関係なく「どういう所が危険でどういう所が安全か」をその都度その都度自分の頭で考えるという作業を面倒くさがってやっていないだけなのではないでしょうか。

それに、僕は北欧みたいな治安のいい所で人に会うにしても、必ず事前にメッセージでのやりとりやテレビ電話での会話をして、「その人がどんな人か」を見てから泊めてもらうかを判断しています。ここで、

「そんなメッセージを何通かやりとりしたりテレビ電話で1時間とか喋った程度でわかるわけないやろ!」

とか思う人もいらっしゃるかもしれません。

でもね、実際の所、こういう文章のやりとりやテレビ電話をすれば、どういう人かなんて大体わかるもんなんですよ。

「1時間喋っただけでわかるか!」

とか言っている人、そういうあなたは自分を長年雇ってくれている会社から10時間以上の面接でもされたのでしょうか?会社の面接だって20~30分ぐらいじゃないですか?面接が1時間もあったらだいぶ長いと感じませんか?僕は初めての就職では会社ではなく教員採用試験の面接を受けましたが、そこでもたしか30分もかからないぐらいでしたよ。僕は日本で派遣社員として働いた時期もありましたが、派遣先の会社の責任者との面談なんて15分とかで終わりで、それで採用決定でした。

会社の面接や公務員試験では、日本の場合は「終身雇用は崩れた」とは言っても、なんだかんだでまだまだ「1つの職場で長年勤めてもらう」事を前提に考えている人がけっこうたくさんいるのですから、日本の職場が

「たかだか20~30分、長くても1時間の面接で今後20~30年も雇い続けるであろう人間の採用/不採用を決めている」

という事実から考えれば、

「1時間テレビ電話で喋って、良さそうな人だと思ったら3泊だけさせてもらう」

事の方がよっぽどリスクの少ない行為だとは言えないでしょうか?3泊させてもらうという事は一緒に過ごすのはその3~4日だけの話であり、何十年も居候するのではないのですから。

で、話は戻って、この「ネットで知り合った現地の友達」に泊めてもらうという旅行のやり方、(少なくとも男性である僕には)大したデメリットがないどころか、メリットがいくつもあります。

まず、宿泊費がかからないです。有り難い事にご厚意で泊めていただいておりますので。
2016年と2012年に日本からフィンランドやスウェーデンに行った時は日本からのお土産を用意していきましたが、今回のトゥルク旅行はオーランド諸島から行ったので「日本らしいもの」は何も用意できず、文字通り手ぶらで行ってしまいました。(Ville君、スマン!)

それに加え、現地の友達に泊めさせてもらった方が現地の事がよりよくわかります。現地の友達は「現地人」なわけですから、その友達のお宅にお邪魔させていただく事で現地の人と過ごす時間が自然と増えるわけです。ホテルに泊まると、宿泊費が高くつく上に現地の人とのコミュニケーションが少なくなりがちです。「むしろそっちの方がいい。現地人との交流は別に求めていない」という人はそれでもいいかもしれませんし、ホテルにはホテルのよさがある事でしょう。(例えば1人旅ではなく家族連れとかだったらさすがにお邪魔させてもらいにくいからホテルの方が現実的だろうし)
でも少なくとも僕は、チャンスがあればできるだけ現地の人のお宅にお邪魔させてもらうようにしているのです。

勉強熱心なVille君の部屋

昼の2時過ぎぐらいにフェリーに乗ってオーランド諸島を出発し、トゥルクに着いたのは夜の8時ぐらい。港ではVille君と彼のお父さんが迎えに来てくれており、自宅まで車で乗せてくれました。この日はもう遅いので観光は翌日から。夜はVille君の部屋でいろいろお喋りしながらまったり過ごしました。

ふと部屋の壁を見回すと目についたのは、日本語、日本語、日本語!!!中でもいろんな魚の名前が漢字で書かれたのを見てビックリ。Ville君本人に写真掲載の許可をもらえたので実際にご覧あれ。

魚偏を使った漢字の数々。
僕にはフリガナなしではほとんど読めない漢字ばかりでした _| ̄|○
日本語ネイティブなのに( ノД`)


ちなみにVille君、「」という漢字も書けます。
僕は読めるけど書けない…(^^;)

自然を愛するフィンランド人。

ちなみにVille君の日本語は既にかなり高いレベルに達しており、日本人を相手に日本語だけでフィンランド語を教える事ができるほどだそうです。現在はアラビア語にも取り組んでおり、ベーシックな部分は既に覚えているそう。

Ville君はフィンランド語と英語と日本語を使いこなし、最近アラビア語にも取り組み始めたという事で、3~4か国語が頭に入っています。ヨーロッパの人で3~4か国語を話せる人はそれほど珍しくないのですが、Ville君には少し特殊な点があります。それは彼の話す4か国語は全て系統の全く異なる言語だという事です。

「3~4か国語喋るヨーロッパ人」

といっても、多くの場合その言語の内訳は

「英語、フランス語、スペイン語、イタリア語」 (ラテン系の言語ばかり)
「英語、ドイツ語、オランダ語、」 (ゲルマン系の言語ばかり)
※しかもラテン系もゲルマン系も、両方とも「インド・ヨーロッパ語族」という同じ語族に属している

などと、「系統の似通った習得しやすい言語」ばかりを選んでおり、僕ら日本人が英語を学ぶよりもよっぽど簡単に習得できるものなのです。

それに対しVille君の4言語の内訳は、

フィンランド語(ウラル語族)
英語(インド・ヨーロッパ語族)
日本語(日本語族)(←これについては「孤立した言語」なのかどうかを巡った論争あり)
アラビア語(アフロ・アジア語族)

と、4つ全てが完全に異なる系統の言語となっています。

系統が全く違う言語を勉強するというのは大変難しい事で、ドイツ人が英語を話せるようになったり、日本人が韓国語を話せるようになるのとはわけが違います。

Ville君曰く、

「系統が似ている言語はたしかに勉強が簡単で覚えやすいけど、逆に系統が違った言語を学ぶ事で今までとは全く違うものの考え方ができるようになるから、それこそが面白い」

のだそうで、自分が既に喋れる言語に似ている、いわゆる「習得しやすい言語」はやっていても退屈なのだそうです。

ちなみにVille君、これだけ言語学習に打ち込んではいるものの、実は語学は彼の本業にあらず。彼は物理学の学生で、最近修士課程を終えたばかり。そこからさらに博士課程に進むそうです。

専門分野は

Quantum Nonequilibrium Statistical Mechanics

といい、日本語でも

「量子非平衡統計力学」

という、名前を見ただけで、

ワ、ワカラン…((((;゚Д゚))))

となりそうな学問です。
(実際にはVille君が素人でもわかるようにかみ砕いて説明してくれたのですが、そこまで説明しだすとさらに長くなるので割愛します)

語学サイトでひょんな事から知り合ったフィンランド人の友達、予想以上のインテリでした。
うおぉー、俺も10代の頃からもっと勉強しとけばよかったー。

後編へ続く