語学の独学に必要なモチベーション維持のコツ

英語をはじめとした語学の独学って、スクールに通ったり語学留学に行くのと違ってお金がかからない反面、モチベーションの維持が非常に難しいイメージがありますよね。まぁこれは語学に限らず、筋トレにしても何にしても、「誰かにコーチとしてついてもらわず自分で自分を鍛える」という点においては共通して言える事かもしれません。

僕は現在フィンランドのスウェーデン語圏で大学のITの授業を現地の学生たちと一緒にスウェーデン語で受けていますが、スウェーデン語は日本にいた頃から独学で勉強しており、日本を出る前の時点で既に「大学で授業を受けるために必要なスウェーデン語力のテスト」にも合格していました。普段はスウェーデン語圏のオーランド諸島という島でスウェーデン語で生活していますが、いずれはフィンランド本土にも行きたいので、フィンランド語も勉強しています。フィンランド語に関しても、スウェーデン語圏であるオーランド諸島では日常的に僕とフィンランド語で話してくれる人がいないので、独学で続けています。

このような事を話すとよく聞かれるのが、「どうやったら途中で挫折せずに努力し続けられるの?」という質問です。

これに対して一言で答えてしまうとすると、

「努力を習慣化してしまう事」

なのですが、それだけではやはり物足りないですし、以下にもう少し詳しく書いていきます。


努力を習慣化するという事

僕は誰に強制されるわけでもなく、これまでに

・ジムでのウエイトトレーニング(13年)
・走り込み(14年)
・スウェーデン語の勉強(5年)
・フィンランド語の勉強(2年)←(これは最近始めたばかりだからまだ短め)

などのトレーニングや勉強を自分で続けています。

僕のこういうライフスタイルを人に話すと、よく「ストイックだね」とか言われるんですけど、これらに関しては僕自身は別に「努力している」という感覚はもはやあんまりないんですね。むしろ「趣味でやってる」みたいな感じ。

僕はどちらかというと元々は怠け者な性格で、子供の頃は勉強はおろかテレビゲームですら自分で努力して上達しようとしない子でした。マリオとかカービィとかドンキーコングとか、最初のうちの簡単な所は「キャッキャ♪」と楽しみながらクリアしていたのですが、だんだん先に進んで難しいステージになるとクリアできなくなってきます。普通の子なら頑張って何度もチャレンジして上達してクリアしそうなものですが、僕はいつもすぐに諦め、友達を家に呼んで、その子に頼んで僕の代わりにクリアしてもらっていました。で、それを横で見て「クリアしたぞー(*´▽`*)」と喜ぶ、と(←お前がクリアしたんじゃねーよw)。今思えばあれの何が楽しかったのかよくわかりませんが、とにかく僕はそういう子でした。

で、なぜそんな体たらくだった人が努力を続けられるようになったのか?それはやるのが当たり前という、「努力が習慣化された状態」になったからです。言ってみれば

「あ、そろそろ夕飯食べよ」
「あ、そろそろ歯磨きしなきゃ」

みたいなモンです。むしろやらないのが何だか変な感じがする。たまに何かの事情で夕飯を抜くハメになったり、歯磨きできなかった日が1日あったとしても、その翌日からいつもの日常生活に戻ったら、また元通り夕飯はしっかり食べるし歯も磨く。

だから

「怠けたい自分自身を奮い立たせて~」
「毎日意思の弱い自分自身と闘って~」

みたいなのもいらないわけです。つまり、努力を続けるための「モチベーションの維持」が必要なのは「努力の習慣化」が完成する手前までの話で、一度習慣化が確立してしまえば、モチベーション維持の手間はなくなるという事です。

さて、努力を習慣化してしまえばもはや「怠けたい自分と闘う」必要すらなくなるという事はわかりましたが、ここで気になるのが、

「じゃあそもそもどうやったら努力を習慣化なんてできるの?」

という事ではないでしょうか。

努力が習慣化されるまではモチベーション維持を続ける必要があるのですが、それには大きく分けて

「ポジティブ系」
「ネガティブ系」

の2つがあります。以下にそれぞれ説明します。

ポジティブ系のモチベーション維持

ポジティブ系のモチベーション維持で大事なのは、なんといっても

「成果を実感する事」
「もっとやりたいと自発的に思うようになる事」

です。

そこに持って行くための最もシンプルな方法の1つが

「記録をつける」

という事です。

僕はウエイトトレーニングでは何年の何月何日に何kgのバーベルが何回挙がったかを毎回記録につけていますし、例えば語学でリーディングをしている場合は「どれだけの文量を読むのに何分かかったか」を記録しています。

こうして自分の活動を記録に残し、後になって客観的に見直す事ができるようにする事で、「おぉ、自分はこんなに上達したのか」と、過去の自分と今の自分を比べて成果を実感しやすくするのです。

人間、自分のやっている事の成果が出ると楽しくなってくるものです。楽しくなると、「これからも続けよう」「もっとやろう」と思えますし、それが努力を続けるための力の源となります。

自分の活動の記録をつけ続けて、ある程度の量の努力をし続けたはずなのに上達が結果に現れてこない場合は、それはそれで「どうすれば成果が出るのだろう」とトレーニング方法や勉強法を見直し、工夫をするための良い機会となります。

僕自身、ウエイトトレーニングにしても、英語やスウェーデン語やフィンランド語の勉強にしても、常に順調に伸び続けていたわけではありません。高校で砲丸投げを現役でやっていた頃はベンチプレスで挙げられるバーベルは95kgまでが限界で(始めたばかりの頃は40kgでもヒーヒー言ってた)、そこからなかなか記録が伸びなかったのですが、大人になってからもトレーニング法をいろいろ調べて工夫しながら続けた結果、現時点では110kgまで記録を伸ばす事ができています。懸垂も、数年前までは自分の体重を持ち上げるだけでいっぱいいっぱいだったのが、今では30㎏の重りを付けてでもできるようになりました。語学でも記録をつけながら勉強していると、伸び悩む時期に入った時に「そういえば、見直してみると○○の練習って今まで全然やってなかったな。これから取り入れてみようか」と勉強法を見直す事で何度も壁を破ってきました。

ネガティブ系のモチベーション維持

モチベーションの維持には、ポジティブ系だけなくネガティブ系のものもあります。

これは、

「もし今自分が取り組んでいる努力で成果が出なかったらどうなるか」

を想像するというものです。

例えば僕の北欧言語の場合、「スウェーデン語やフィンランド語がこのまま上達しなかったらどうなるか」を考えます。北欧はたしかに英語が広く通じますが、僕みたいに北欧の大学を卒業した後もそのまま現地で就職してそこに住み続けたい人の場合、現地語の習得の必要性はグンと上がります。北欧の職場では英語と現地語の両方を喋れるのが当たり前であり、それができなければ「現地就職→現地永住」の可能性が下がるからです。

僕は旅行で1週間とかの一時滞在とかならともかく、そこにずっと住むつもりならば現地語の習得は必須であると考えています(もちろん現地語を覚えなくてもよい例外的なケースも一部ありますが)。「現地語を覚えなければ本当の意味では現地には住めない」と考えているから、現地語であるスウェーデン語やフィンランド語が伸びていなかったらそれは「危機的状況」と認識し、「このままではいけない!もっと勉強しなければ!」となるのです。

ちなみに、語学ではこういう「危機的状況」は意図的に作り上げる事も可能です。例えば、今の自分から見て少し難しすぎる課題にあえて取り組んでみる、というものです。ほとんど聞き取れないリスニング、何から書き始めていいかわからないような難しいライティング課題などです。日常的にこういう課題ばかりに取り組むのは学習効果が薄いのでオススメしませんが、たまにやる程度なら、「うわー、自分まだまだじゃん。もっと頑張らなきゃ」という気持ちにさせるスパイスとしては使えなくもないです。

ただし、こういうネガティブ系のモチベーション維持は、「成果が出なくても別に困らない」と思っている人にはあまり効果は期待できないと僕は思います。例えば、「日本に住んでいる英語を上達させたい日本人」が「うーん、やっぱり別に英語が上達しなくても日本国内で日本語で生活する分には困らないしな」と考えたり、日本に住んでいる外国人が「まぁ別に日本語がこのまま上達しなくても、英語が通じる場所だけしか行かなければなんとかなるしな」と妥協するような場合です。

ポジティブ系VSネガティブ系

さて、ポジティブ系とネガティブ系の二つのモチベーション維持法を紹介しましたが、どちらの方が効果が高いのでしょう?「サイエンス・ヘルプ」(科学の研究を一般人でもわかりやすいように説明する事)で知られる健康心理学者のケリー・マクゴニガルによると、

「圧倒的にネガティブ系の方が効果が高い」

のだそうです。
以下に彼女の動画と説明の該当部分を載せます。

Kelly McGonigal: “The Willpower Instinct” | Talks at Google

(35:35-37:43)の約2分間

(以下英語字幕&テキトーにつけた日本語訳)
Do you think it’s more helpful to imagine or visualize yourself failing, or is it more helpful to visualize or imagine yourself succeeding?
自分自身が失敗しているのを想像するのと、成功しているのを想像するのと、どちらがより効果があると思いますか?

(挙手を求めた所、大多数が「成功している方」と答えた)

You guys are such typical Americans. Okay, that’s what everyone thinks. Actually it turns out imagining failure is way more helpful than imagining success. Not that imagining success is always bad, but imagining failure is better.
みなさん典型的なアメリカ人ですね。まあみんなそう考えるでしょう。でも実は成功しているのを想像するするより、失敗を想像した方がはるかに効果が高いんです。成功を想像するのが悪いというわけではなく、失敗を想像した方がより高い効果を得られる、ということです。

In this particular study they took women from young adults to middle aged, little bit older adults, all of whom were not exercising at all, and all of whom had a goal to exercise. And some of those women were randomly assigned to the typical “It’s good to exercise. Here is why you should exercise, now think about your goal, imagine yourself doing it.” Very typical.
この研究では普段全く運動していないが「運動しよう」という意思のある成人女性を、若年層、中年層、それよりも少し年齢の高い層から集めました。その内の何人かは、よくある「運動は体にいいですよ。運動するとこんなに良いことがあります。だから今から目標を立て、運動しているところを想像してみましょう」みたいな形でポジティブに運動を促しました。

And the other half were randomly assigned to, what they can call an obstacle condition, where they had to imagine themselves failing. They had to ask themselves “When are you gonna not exercise?” What is the obstacle going to be? When is it gonna happen? What are you gonna do if that happens? And they had people write about that every single day. They had to write out “when are you not gonna exercise?” “what are you gonna say to yourself that allows you not to exercise? When is it gonna happen? How is it gonna happen? What are you going to do when you start to recognize that stuff happening?”
もう片方のグループは、Obstacle conditionと呼ばれるもので、失敗している所を想像するように指示されました。「運動しないのはいつ?運動の障壁となるのは何?それはどんな時に起こる?もし起こったとしたらどうする?」などと書き、自分自身に問いかけるのです。

And the women were becoming kind of detective of their own failures. And every day they revised what they were writing based on what they noticed. “I didn’t exercise because I told myself I’ll do it, later I’ll do it later, and now it’s time to go to sleep” or “I didn’t do it because I got so busy at work and I didn’t have my sneakers, so I didn’t do it”. And they became very clear about how they failed. And they were able to predict future failure from that. And here is what the results were. It had an immediate effect of doubling the amount of time they were exercising.
すると女性たちは自分自身の失敗を感知するようになりました。自分で気づいたことを基に、書く内容を修正していきます。「今日は自分自身に『また後でやる、また後でやる』と言い聞かせているうちに寝る時間になってしまってできなかった」とか「仕事で忙しくなっちゃったし、スニーカーも持ってなかったし」などと書くのです。すると、自分がどのように失敗するかがクリアに見えるようなり、将来の失敗も予測できるようになるのです。そしてその結果どうなったかというと、すぐに効果が現れ、彼女たちの運動量が2倍になりました。

まとめ

モチベーション維持には、ポジティブ系にしてもネガティブ系にしてもやはり何らかの形で自分の活動記録をつけるのが良いようですね。これは記録を残す事によって自分自身を客観的に見つめ、自分自身を監督する効果があるからだと思います。

いきなり毎日2~3時間勉強するのは大変でも、自分の活動を簡単に記録することぐらいならハードルも低いはず。最終的な目標が何であれ、まずは簡単にできる事から少しずつ始めていくのはどうでしょうか?

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