Page 17:北欧の大学の新入生歓迎会、Insparken

オーランド大学での授業が始まって3週目の木曜日。この日は年に一度の恒例行事、「インスパルケン」(上級生主催の新入生歓迎会)が行われる日です。このインスパルケンという単語、スウェーデン語ではInsparkenと書くのですが、実際に歓迎会に参加してみた中で何故このように呼ばれているのかだんだんわかってきました。

 

【Insparkenの名前の由来】

まずInsparkenという単語の意味について少し説明しましょう。この単語はin + spark + en の部分に分解できます。スウェーデン語でsparkは「蹴り」、inは英語と同じく「中(へ)」、enは英語でいう定冠詞のtheに相当する部分です。

(※ちなみにスウェーデン語では不定冠詞(英語でいうa/an)は単語の前につきますが、定冠詞(英語で言うthe)は単語の後ろにつきます。例えば en bok (a book)はboken (the book)になります。)
(※また、スウェーデン語では不定冠詞がenとettの2種類あり、単語毎に2種類のうちのどちらなのかいちいち覚えなければいけません。そして、定冠詞も不定冠詞がenとettのどちらなのかに応じて形を変えなければいけません。例えばa book→the book はen bok→bokenになりますが、a house→the houseはett hus→husetとなります)

Insparkenを英語や日本語に直訳すると、”The kick in”、「中へ入れる蹴り、蹴り入れる」という意味になり、”Kick out”、「蹴り出す(手荒くつまみ出す、追い出す)」の反対、つまり「(手荒く)迎え入れる」という意味になるみたいです。

ちなみにこれがインスパルケンのワッペン。蹴ってますね~。

んで実際単語の意味が示す通り、この新入生歓迎会はなかなか手荒い感じだったんですね。

 

【Insparkenではどんな事をするのか?】

では以下にこの行事の詳細を。

インスパルケンに参加する新入生は既に仲良くなったグループのメンバーばかりで固まらないようにランダムに番号札を渡され、番号が一緒になった人たちと同じグループでこの日一日を行動する事になります。僕が渡された番号は8番で、グループ8となりました。

次に黒いゴミ袋を渡されました。何に使うのかと思いきや、ゴミ袋には穴が3つ空けられており、これらに両手と頭を通してシャツのようにして服の上から着るみたいです。

そしてInsparkenは一応グループ対抗の競争になっています。スタンプラリーのように何か所か用意されている”Station”(チェックポイント)を巡り、それぞれのStationで行われるゲームをクリアするとその出来栄えに応じたポイントがもらえ、すべてのStationを巡り終わった時点で最も多くのポイントを稼いだグループが優勝、という事になっているらしいですが、メインの趣旨としてはいろんなゲームを通して親睦を深めようというものみたいです。

Stationに向かう道中、「ゴミ袋スーツ」を身にまとった御一行を後ろからパシャリ。

そして以下が各Stationで行われたゲームです。それぞれ行われた順にゲームの内容とそこで起こったやりとりを紹介していきましょう。

[1] ペットボトル・タンポンスクワット
[2] グルグルバット→出前
[3] 4人5手テント組み立て
[4] コップ返し
[5] タマゴ投げ
[6] 服つなぎ計測

 

【1. ペットボトル・タンポンスクワット】

まず最初の[1]のペットボトル・タンポンスクワット。これは2人1組になって行う目隠し誘導ゲームです。目隠しされた人は腰からタンポンをぶら下げ、目隠し無しの人のリードでキャップの外れているペットボトルのある所まで歩いていきます。そしてパートナーの言葉のみによる誘導でペットボトルの口の中にスクワットをするような形でタンポンを挿入する、というものです。早くできればできるほど獲得できるポイントも多くなります。

僕は誘導する側の人になってしまったので、ちゃんとスウェーデン語で指示できるのかだいぶ不安がありました。上手くできなかった時の言い訳を予めしておこうと、ゲーム開始前に同じチームの子にちょっと声をかけてみました。

僕:「あのさ、もし僕のスウェーデン語がわかんなかったらそう言ってね。何しろ僕、元々スウェーデン語圏出身じゃない上に、まだここに引っ越してきて3週間ぐらいしか経ってないんだ」

チームメイト:「どこから引っ越してきたの?」

僕:「日本からだよ」

チームメイト:「マジ??でもスウェーデン語喋ってるじゃん!たった3週間でそんなに喋れるようになるなんて!

そしてこのゲームが終わった後に「ここに引っ越してきたのは3週間前だけど、日本にいた時からスウェーデン語の勉強は4年ぐらいやってたんだよ」と改めて説明したものの、みなさんあまり人の説明を聞いていないようで、

チームメイトA:「おい、聞いたか。彼、たったの3週間で既にこんなにスウェーデン語喋れるようになってるぞ!

チームメイトB:「それはアンビリーバボーだ。彼はキングだ!

てな感じの展開になってしまい、気が付けば本名を覚えられる前に「キング」と呼ばれ始め、さらにはそこから派生して「キンゲン」というあだ名を付けられてしまいました。英語の「キング」と、スウェーデン語で”The king”を意味する「クンゲン」(”kungen”)が混ざってこうなってしまったようです。

 

【2. グルグルバット→出前】

さて、[2] のグルグルバットは、バットを頭につけて10回転した直後にグラスがたくさん載ったトレイを利き手と反対の手で持ち、少し離れた木まで走って戻ってくるというもの。これもタイムが良いほどポイントがたくさん稼げます。

グルグル実行中

グルグルバットが終わると、イベントオーガナイザーである上級生たちの内の1人がこう言いました。

「ここでさらにボーナスポイントを稼げるゲームがあるけど、やりたい人はいないか?先着2名だ」

早々に男性陣2名が手を挙げ、ボーナスゲームが始まる事に。

そのボーナスゲーム(?)の内容とは、全裸で大学のキャンパスを走り回る事。全裸の上からあの黒いゴミ袋をかぶるので、一応大事な部分は隠されるし正確には全裸ではないのですが、名乗りを挙げたあの2人はさぞスースーした事でしょう。(気温約10℃)

 

【3.  4人5手テント組み立て】

[3] のテント組み立ては、テントをいかに早く組み立てられるのかを競うものなのですが、やっかいな条件が2つ。

1つは、チーム内で指示を出す役の人が1人選ばれるのですが、残りのメンバーはその人の指示通りにしか動いてはいけない上に、指示役の人は口で言うだけでモノには一切触れてはいけないという事。

もう1つは、テント組み立て役のメンバーは全員手首をストラップで繋がれるという事です。2人3脚ならぬ、3人4手または4人5手になります。

両端の人は片方の手はストラップで繋がれていないので自由に動かせますが、僕は真ん中に入ってしまったので両手とも隣の人とストラップで繋がれ、両手ともロクに動かせず囚われの身のような感じになってしまいました。さらに僕の右手に繋がれている人が右に移動し、左側の人が左に移動して作業しだすと、いよいよ軽く十字架磔のような状態になり、テントにはほとんど触れる事なく作業終了。

さてここでもボーナスポイントがもらえる追加ゲームがあるのだとか。それはメンバー全員で完成したテントの中に入り、その中で誰か1人がズボンとパンツを脱いで外の上級生に「脱いだ証拠」を渡すというもの。テントの中には女の子もいたというのに大丈夫なのか、これ?ちなみにこれも手をストラップで繋がれた状態のままやるので、両手とも繋がれてる人はストラップが食い込みはっきりいって痛いですw

さて、ここまでで気になった事が2つほどありました。

1つは各Stationに到着するたびに飲まされるという事。普通にコップに一杯つがれる事もあれば、オモチャの注射器で注入されたり、水鉄砲で口の中に発射される事もありました。ちなみにこれらのドリンクは原則アルコールですが、飲めない人のためにノンアルコール版も用意されており、アルコールを無理やり飲まされるいわゆる「アルハラ」はありません。

もう1つは何かにつけて服を脱ぐ系のゲームがあるという事。特に裸でキャンパスを走り回るのなんて、(特に警察に)見つかったらどうすんだと思いましたが、主催者の上級生曰く、

「フィンランドでは公衆の場で全裸になっても違法ではない」(←本当かよ?)
「建物の外でお酒を飲むのは違法だけど、年に1回だけだし大丈夫」(←ダメじゃん、それw)

との事だそうです。

 

【4.  コップ返し】

さて[4]のコップ返しは、出された飲み物(飲めない人はノンアルコールでOK)を飲み干し、テーブルから半分はみ出して置いたコップをデコピンのように下から指ではじいて上手く上下逆さまにひっくり返すというもの。チームのメンバー1人ずつ行い、全員がクリアするまでにかかった時間を競います。

 

【5. タマゴ投げ】

[5]のタマゴ投げはビーチで行われます。これは投げる役と受ける役の人に分かれ、受ける役の人がサッカーのヘディングや胸を使ったトラップのような形で飛んでくるタマゴを割る事ができればポイントが入るというもの。

出される課題が比較的平和なものになってきたと思いきや、インスパルケンはこのままでは終わらないのでした。

 

【6. 服つなぎ計測】

一番の山場が[6]の服つなぎ計測でした。ここではみんなで服を脱いで(←またかよ)、脱いだ服をなるべく細長くして地面に一直線に並べて置いて、その端から端までの長さを競います。

ちなみに出来上がり図はこんな感じ。

さて、ここでチームメンバーの1人が僕にこう言いました。

「ちなみにスウェーデンでも似たような事やってるけど、あっちだとけっこう無理やり脱がされるからね。全裸になるまで。でもオーランドでは優しいから、脱ぐのは自分が大丈夫だと思う範囲まででいいよ。プレッシャーは一切ないから^^

ちなみにこの服つなぎ計測ゲームにもボーナスルールがあります。それは全裸になればつないだ服の延長線上に横たわる事ができ、服だけでなく自分の身長分も尺が稼げるというものです。僕以外の男性陣は全員全裸になり(←またかよ)、服の列の延長線上に一直線に横たわります(大事な部分は片手で隠しながら)。

ちなみにさすがに女の子は免除というのが暗黙の了解のようで、女子で脱いでる子はさすがに1人も見当たりませんでした。(上着や靴や靴下ぐらいまでなら脱いでたけど)

僕も一応ちょっとは貢献しようと、上半身は脱ぐ事にしました。すると

「キンゲン、靴と靴下も脱げないか。少しでも尺を稼ぐんだ」

と注文がついたので応じる事に。

しかししばらくすると、同じグループの女の子から

「ちょっとキンゲン、なんでまだズボンはいてんの?!」

と言われてしまいました。

僕:「は?でもさっきどこまで脱ぐかは個人の自由だって…」

女子:「いいからさっさと脱いで!尺が稼げないでしょ!」

 

「なんだとぉ?人に『脱げ』と要求するなら、まず先に自分が脱がんかぁ!!」(# ゚Д゚)クワッッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………などとは口が裂けても言えず、大人しく言いなりになる僕。(しかもスウェーデン語での会話のため反応速度鈍し)

チクショー。自分は免除されてるからっていい気になりおって( ノД`)シクシク…

泣く泣くズボンも脱いで服の列に加え、パンツ一枚になった僕。気温は約10℃でございます。寒い。

さらにもうしばらくすると、男性陣(全員全裸)からパンツも脱げと注文が。

男性陣(全員全裸):「キンゲン、君も脱いで横たわって列に加わってくれ!」

僕:「え?いや、、さすがにそれは……俺はパンツはいたままで横になるわ」

女子:「だから横になるのは全裸になってからじゃないとダメなルールなんだってば!」

男性陣(全員全裸):「キンゲン、頼む!チームのためだ!」

女子:「大丈夫、私たちは後ろ向いて脱いでる所は見ないから!脱いだらすぐにうつ伏せになれば見えないでしょ!」(←そういう問題じゃねぇよ)

男性陣(全員全裸):「そうだキンゲン、最後は君にかかっている!!!」

そして結局僕は最後には全部脱がされ、列に加わりました。(気温約10℃)

誰だ、最初に「どこまで脱ぐかは個人の自由であり、プレッシャーは一切ない」とか言った奴は?

結論…集団圧力はフィンランドにもある。

こうして逆セクハラ(?)の被害に遭いつつも、なんとか全てのStationを回り切り、全てのグループがステージに集まってきました。どうやら優勝チームの発表が行われていたらしいのですが、みんなが叫んで騒ぎすぎてもはや何を言っているのか聞こえない(笑)みなさん酔っぱらってましたね~。

 

【酒に酔った時のフィンランド人】

普段あまり喋らない印象だったクラスメイトの何人かもだいぶ出来上がっていたようで、僕を見つけるとズンズン近づいてきて、顔を僕の顔の目の前5cmまで近づけながら、

(1)「いやぁ~、もし授業とかで助けが必要だったら、いつでも言ってくれ!いつでも相談に乗るぞ!」
(2)「ところで日本の自動車は世界一だ!カローラは最高だ!」
(3) 「ところで君のスウェーデン語は素晴らしい!どうやって勉強したんだ?」
→以下(1)に戻って無限ループ

の下りをひたすら繰り返されたり、他にも

(1)「俺、日本語できるぞ!」と言い、
(2) 日本語で「あのね~、えっとね~、ちょっとね~、あのね~…」とひたすら呟き、
(3)「いや、でも俺の日本語はOKだろ?」とスウェーデン語に戻して言い、
→以下(1)に戻って無限ループ

みたいな人もいました。

しばらくすると周りの多くの人はバラバラと帰りだしたものの、僕の目の前はいまだに無限ループ実行中。このままではラチがあかないので、隙をみて「じゃあ、もうそろそろ帰って寝るね!」と言って何とか抜け出す事に成功。こうして僕の人生初の北欧での新入生歓迎会、インスパルケンは幕を閉じたのでした。

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